三越伊勢丹が怒濤(どとう)のデジタル攻勢を見せている。組織を再編し、DX推進をリードするグループ会社を立ち上げ相次ぎシステムを開発するなど、従来にないスピード感で矢継ぎ早にデジタル施策を実行。アジャイルでシステムを開発するため新たなIT基盤も構築した。目指すは百貨店のデジタル変革。新型コロナウイルスで百貨店業界を取り巻く環境が様変わりする中、生き残りをかけた三越伊勢丹の「百貨店DX」の全貌に迫る。
三越伊勢丹がこれほどのスピード感でデジタル施策を打ち出せる理由は、先んじて取り組んだDevOps基盤の構築にある。
「開発スピードを高めるためには、フロントシステムの開発部隊がインフラや監視の設定、運用も全てセルフサービスで行える環境が必要と考えた。三越伊勢丹のDX戦略においてDevOps基盤の構築は必然だった」。アイムデジタルラボの鈴木雄介取締役はこう話す。
他部署への依頼がスピード開発の足かせに
三越伊勢丹グループのIT部隊は従来、開発チームとインフラチーム、運用監視チームに部署を分けていた。新たにフロントシステムを構築するには、開発チームがインフラチームや運用監視チームにそれぞれ依頼書を出し、部署をまたいで作業をお願いする必要があった。
「依頼する側もきちんと設計してから依頼を出さなければならず、それだけで1カ月以上かかっていた。依頼書を出してからも、インフラチームの案件待ちでさらに1カ月以上かかるなどしていた」(鈴木取締役)という。
開発チームは以前からアジャイル開発に取り組んでいたが、インフラや監視の部分でどうしても時間がかかり、それがスピード開発の足かせになっていたという。これらの問題を解消するため、開発チームが全て自分たちでインフラと監視の設定や運用も手掛けられる環境を整えようと考えた。これが三越伊勢丹のDevOps基盤だ。
加えて、今後顧客向けの様々なDXサービスを開発するには、どうしても基幹システムとの連係が必要になる。「そのつど(基幹システムの担当者と)調整していては手間となるため、基幹システムのデータや機能をフロントから使いやすくする仕組みが必要」(鈴木取締役)と考え、独自のデータ活用プラットフォーム「ビジネスプラットフォーム」を併せて構築した。