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 格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)が窮地に立たされている。2020年9月に発足した菅義偉政権の強い要請を受け、携帯大手3社が相次ぎ値下げを発表。当初の主戦場は中容量や大容量のプランだったが、KDDIとソフトバンクはサブブランドを通じ、MVNOがこれまで得意としてきた小容量の領域にも攻め込んできた。値下げによる減収影響を契約数の拡大で補うためだ。

 さらに楽天モバイルは携帯大手3社の値下げを受け、1回線目を対象に月間データ通信量が1ギガバイト以下の場合は0円とする奇策を繰り出してきた。同社はEC(電子商取引)や金融などを含めた「楽天経済圏」で総合力勝負を挑んでいる。規模の小さなMVNOにはまねできない芸当だ。携帯大手の争いから一転、MVNOが草刈り場となりかねない様相を呈してきた。

携帯大手3社と楽天モバイルが相次ぎ値下げを発表
(GBはギガバイト)
時期概要
2020年9月菅義偉政権が発足し、携帯電話料金の引き下げが重点政策の1つに
2020年10月総務省が「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を公表
KDDIとソフトバンクがサブブランドを通じ、月間データ通信量20GBで割安な新料金プランを発表
2020年12月NTTドコモが月間データ通信量20GBのオンライン専用プランを発表
ソフトバンクがドコモ対抗のオンライン専用プランなどを発表
2021年1月KDDIがドコモ対抗のオンライン専用プランなどを発表
楽天モバイルが月間データ通信量1GBまで0円(1回線目)とした新料金プランを発表

データ接続料は3年間で半減へ

 正念場を迎えたMVNOが期待を寄せるのは、携帯大手から設備を借りる際に支払う接続料の低廉化だ。MVNOの接続料負担はサービスの設計にもよるが、品質に力を入れる事業者では収入の7割程度を占めるケースもあるとされる。接続料の低廉化で負担が減れば、値下げや販促強化、後述する帯域幅増強などに回せる。

 総務省は2020年10月に公表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」で、MVNO向けのデータ接続料について「今年度(2020年度)から3年間で昨年度(2019年度)比5割減を目指す」と掲げた。データ接続料とは、MVNOがデータ通信サービスの提供に当たって携帯大手に支払っているレンタル料のことだ。

 3年間で半減と聞くと驚くかもしれないが、実は大した目標ではない。データ接続料は設備にかかった費用をトラフィック(通信量)で割ることで算出している。スマホの普及拡大でトラフィックが増大する局面では、データ接続料が下がって当たり前なのだ。

 総務省は2019年度の届け出から「将来原価方式」と呼ぶ算定を取り入れ、携帯大手3社は3年分のデータ接続料の予測を公表済み。2019年度に比べた2022年度のデータ接続料の水準はドコモが46.8%減、KDDIが58.4%減、ソフトバンクが59.1%減となっており、この予測が大きく外れていなければ、3年間で半減は実現できる見通しだ。既定路線と言え、冷めた目で見る向きが多かった。

携帯大手3社のデータ接続料の見通し
携帯大手3社のデータ接続料の見通し
(出所:総務省)
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 だが冒頭の通り、携帯大手3社の相次ぐ値下げで状況は一変した。特にドコモの「ahamo(アハモ)」をはじめとする各社オンライン専用プランは月間データ通信量20ギガバイトで月2480円から、1回5分以内の国内通話かけ放題を付けても月2700~2980円と破格の安さである。一部のMVNOからは「我々にはとても追随できず不当廉売に当たるのではないか」といった声が出るほどだ。