NTTドコモの攻勢で始まった携帯電話の料金下げ競争。当初の主戦場は中容量や大容量だったが、小容量にも波及。「全面戦争」の様相を呈している。この影響でもろに打撃を受けそうなのが、格安スマホを展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。楽天モバイルを含む携帯各社の競争激化でMVNOが草刈り場になるとの見方は多い。
だが、MVNOも手をこまぬいているわけではない。大手MVNOを中心に相次ぎ値下げを発表しており、迎え撃つ構えだ。料金では数十円の差でしのぎを削り、差異化に向けて様々な工夫を凝らす。「MVNOの居場所がなくなった感じは決してない。乗り換え障壁も減っており、しっかり伸ばしていく」(インターネットイニシアティブの矢吹重雄執行役員MVNO事業部長)と意気込む。生き残りをかけたMVNO各社の動向を追った。
時期 | 概要 |
---|---|
2020年12月 | 日本通信がNTTドコモ対抗の新料金「合理的20GBプラン」を発表 |
2021年1月 | Y.U-mobileが「y.u mobile」の値下げなどを発表 |
オプテージが「mineo」の新料金「マイピタ」を発表 | |
ジュピターテレコムが「J:COM MOBILE」の新料金を発表 | |
2021年2月 | ビッグローブが「BIGLOBEモバイル」の新料金を発表 |
インターネットイニシアティブが「IIJmioモバイルサービス」の新料金「ギガプラン」を発表 | |
2021年3月 | イオンリテールが「イオンモバイル」の新料金「さいてきプラン」を発表 |
ソニーネットワークコミュニケーションズが「nuroモバイル」の新料金「バリュープラス」を発表 | |
エキサイトが「エキサイトモバイル」の新料金「Fit」「Flat」を発表 | |
NTTコミュニケーションズが「OCN モバイル ONE」の新料金を発表 |
「正直、殴り合いはしたくない」
携帯大手の料金競争が激化する中、MVNOに衝撃が走ったのは、KDDIが2021年1月13日に「UQモバイル」ブランドで出した新料金だ。最も安い「くりこしプランS」は月間データ通信量が3ギガバイトで月1628円(税込み、以下同じ)。当時はMVNO大手の料金を軒並み下回る水準だった。
2021年1月29日には楽天モバイルが新料金「Rakuten UN-LIMIT VI」を発表。1回線目を対象に月間データ通信量が1ギガバイト以下の場合は無料とした。MVNO各社は安穏としていられなくなった。
こうした動きを受け、MVNO最大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が2021年2月24日に打ち出した新料金が「IIJmioモバイルサービス ギガプラン」だ。音声SIMの料金は月間データ通信量が2ギガバイトで月858円から。同4ギガで月1078円、同8ギガで月1518円、同15ギガで月1848円、同20ギガで月2068円と、小容量だけでなく大容量でも競争力の高い値付けとした。
続いて2021年3月4日にはソニーネットワークコミュニケーションズが「nuroモバイル」の新料金「バリュープラス」を発表した。音声SIMの料金は月間データ通信量が3ギガバイトで月792円、同5ギガで月990円、同8ギガで月1485円とIIJをさらに下回る。NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」も音声SIMの料金を同1ギガバイトで月770円からに引き下げており、かなり激しい争いとなっている。
もっとも、さらなる料金競争には発展せず一段落となりそう。最安にこだわってもきりがなく、減収影響が大きくなるだけだからだ。「正直、料金の殴り合いはしたくない」(あるMVNO幹部)との声が少なからず聞こえてくる。「料金+α」の総合力で顧客を維持、拡大できればよしと考える向きが多いようだ。