全1735文字

 東日本大震災で相次いだ、吊り天井の崩落。国土交通省は高さ6m超、面積200m2超といった条件に該当する「特定天井」の技術基準を定め、耐震化を推し進めた。震災から10年を経て、天井の安全は実現できたのか。当時から「材料を軽量化し、落下しても本質的に安全な天井を実現すべきだ」と主張してきた東京大学生産技術研究所の川口健一教授に聞いた。(聞き手:木村 駿)

東京大学生産技術研究所の川口健一教授(写真:日経クロステック)
東京大学生産技術研究所の川口健一教授(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

震災後、国交省は「特定天井」に関する告示を定め、該当する天井に関して耐震性の検証を義務付けました。公立学校の体育館などでは吊り天井の落下防止対策が進んでいます。現状をどうご覧になりますか。

 良くなった部分はあるでしょう。でも、東日本大震災は、もっと根本的に社会を良くするきっかけになり得たと思います。天井の基準についても、同じことが言える。

 建築基準法はすぐに「迷い道」に入ってしまいます。特定天井の基準のように「6m超」とか「200m2超」といった数値を決めてしまうと、それをどうやって免れるかという、くだらない話が必ず出てきてしまいます。実際、天井の高さを5.9mにして規制を逃れているケースも散見されます。これで天井は、本当に安全になったと言えるのでしょうか。

 天井が壁に接しているのがいいのか、クリアランスをとったほうがいいのか、といった議論もそうです。僕は以前から、そういう方向に踏み出してはいけない、本質的な安全性を確保するために軽くて軟らかい天井材を使おう、と言ってきました。

 ですから、当時の繰り返しになりますが、天井の高さとそれに応じた材料の重量を決め、それらを満たしていればあとは自由に使っていい、というような基準にすべきだったと思います。数値を定め、今までの天井をもっと強くするというやり方では、根本的な進化はありませんよ。

川口さんの考え方を取り入れたケースも少なからずあったのでは。震災後、軽さや軟らかさに着目した新たな天井材が生まれました。

 確かに、様々な企業がそうしたアプローチで技術開発に取り組み、不燃で軽くて軟らかい材料が世に出てきたのは喜ばしいことでした。うまく普及した材料の1つが膜天井です。