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 原子力発電所の廃炉作業には遠隔ロボットが欠かせない。人が長い時間居られない、もしくは狭くて立ち入れない場所でも、ロボットならば入り込んで作業をこなせる。しかし、そんなロボットでも福島第1原発内の作業環境はかなり過酷だ。

 まず立ちはだかるのが、高い放射線量である。電気的に動作するカメラやセンサーが、影響を受ける可能性がある。さらに、炉心溶融した原子炉では今でも冷却水の注入が続いており、電子回路や電動モーターを保護するため防水性能を高めなくてはならない。

ロボットに水圧シリンダー

 そこで日立GEニュークリア・エナジー(茨城県日立市)は国際廃炉研究開発機構(IRID)と共同で、電動モーターを使わずに駆動する「柔構造アーム」を搭載したロボットの開発を進めている(図1)。別名「筋肉ロボット」。アームのアクチュエーターとして、電動モーターの代わりに水圧シリンダーを使う。文字通り、水の圧力を使って往復運動を生み出すのが特徴だ。

図1 柔構造アームを搭載したロボット
図1 柔構造アームを搭載したロボット
単腕の柔構造アームをクローラーと組み合わせたロボット。長さ2.7×幅0.6×高さ0.35m、質量230kg、ペイロード35kg。がれき撤去の他、コンクリートに穴を開けるコア抜きのような振動を伴う作業も可能だ。(出所:日立GEニュークリア・エナジー)
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 詳細は後述するが、柔構造アームの内部には複数本の水圧シリンダーがあり、それらを伸縮して上下左右の様々な方向に全体を曲げられる。柔構造アームは1基だけでも使えるが、複数本を組み合わせれば様々な形のロボットを設計できるという。

 水圧シリンダーには3つの利点がある。1つ目は、放射線による影響を受けにくいこと。柔構造アームは、アクチュエーターとなる水圧シリンダーとポンプや電磁弁といった制御機器との間をホースで接続して制御する。現場に向かうロボット本体に、バッテリーやセンサー、電子回路を積まなくて済む。電気系統を放射線量の低い場所に設置できるので、誤動作や劣化の恐れを減らせる、というわけだ。

 「放射線量が正確に分からない現場でも活用しやすい」――。柔構造アームの開発担当で、同社原子力生産本部福島・廃止措置エンジニアリングセンタ福島エンジニアリング設計グループ主任技師の平野克彦氏は、こう説明する。

 2つ目は、外部からの衝撃に強い点だ。一般に、電動モーターと減速機を組み合わせたロボットアームの関節は硬く、外力を受けても簡単には曲がらない。すると、構造物と衝突したときにロボットが破損する恐れもあるし、逆に構造物を傷つける恐れもある。その点、水圧シリンダーであれば、作動流体である水や配管の弾性によって、緩やかに受け止められる。何らかの拍子に倒れたり引きずられたりしても、壊れにくいというわけだ。

 3つ目に、水圧シリンダーならロボットが破損しても原子炉への影響を抑えられる点が挙げられる。「作動流体が水なので、仮に漏れたとしても現場への影響は小さい」(平野氏)。