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 東京電力福島第1原子力発電所(1F、いちえふ)の大事故で炉心溶融に至った1・2・3号機。現在進められている廃炉措置で大きな関所となるのが燃料デブリの取り出しである。燃料デブリとは、ウラン燃料そのものと、燃料を覆う金属の被覆管などが溶けた後に冷え、再び固まったもの。圧力容器の底部や格納容器の底部に溶け落ちているとされる。廃炉の実現には、この燃料デブリを取り出して輸送容器に収容し、原子炉建屋の外に運び出さなくてはならない。

2022年から燃料デブリの取り出しが始まる2号機
2022年から燃料デブリの取り出しが始まる2号機
2021年3月8日撮影(写真:山根 一眞)
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 その取り出し作業の最初の一歩として準備が進むのが、格納容器の内部にある燃料デブリにアクセスするための全長約22m、質量約4.6tという巨大なロボットアームだ(図1)。自由度は18軸で、主な動力は電動モーター。三菱重工業と原子力関連企業の英Veolia Nuclear Solutions(ヴェオリア・ニュークリア・ソリューションズ、以下VNS)が共同で開発した。

図1 ロボットアーム
図1 ロボットアーム
全長約22m、幅約25×縦約40cm、質量約4.6t、自由度18軸。2号機燃料デブリの試験的な取り出しに使う。(出所:国際廃炉研究開発機構・三菱重工業・英Veolia Nuclear Solutions)
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 2022年に、このロボットアームを使った試験的な取り出しが2号機で始まる*1。アームの先端に取り付けた回収装置で1gほどの燃料デブリを数回にわたって回収し、持ち帰るのが目標だ。現在、そのための動作試験が英国で続けられている。

 取り出した燃料デブリは、日本原子力研究開発機構の大熊分析・研究センター(福島県・大熊町)に持ち込んで分析する。将来の本格的な燃料デブリ取り出しに向けて、基礎となるデータを取得するのが狙いだ。

*1 当初は2021年中に燃料デブリの取り出しを始める計画だったが、新型コロナウイルス感染症の影響により英国での作業が遅れ、1年の後ろ倒しとなった。

8基の主要パーツを畳んで格納

 三菱重工とVNSが開発するロボットアームは、格納容器の側面に開く貫通穴「X-6ペネトレーション」(以下、X-6ペネ)を通って、原子炉格納容器の内部に進入する(図2*2。アームの材料は主にステンレス鋼とアルミニウム合金で、長方形をした断面寸法は幅約25×縦約40cmである。全長が22mもあるので、非常に細長い。直径約60cmのX-6ペネを通過した上で、燃料デブリに到達するために必要なのがこの長さだった。細長い主要パーツ8基を関節でつないで全長22mの長さを実現している。

図2 ロボットアームの動き
図2 ロボットアームの動き
2号機建屋の断面イメージ(a)、X-6ペネトレーション(b)、ロボットアームの動作概要(c)。燃料デブリのある原子炉格納容器の内部に向けてロボットアームを伸ばす。(画像a・写真b:東京電力ホールディングス、画像c:国際廃炉研究開発機構・三菱重工業・英Veolia Nuclear Solutions)
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*2 X-6ペネトレーションは格納容器の外側と内側をつなぐ水平の貫通穴。直径は約60cm。制御棒の駆動装置を交換する保守作業用に設けられている。

 作業開始前、このロボットアームは「エンクロージャ」と呼ぶステンレス鋼製の大きな部屋に、蛇腹のように折り畳んで収納してある(図3)。エンクロージャは、格納容器と外部とを隔離する役割を果たしている。ロボットアームを格納容器に入れるには、X-6ぺネのハッチを開かなくてはならない。