2021年2月末、福島第1原子力発電所の3号機で2年弱に渡って続けられていた作業が完了した。その作業とは、使用済み燃料プール*1で水につかっている使用済み燃料集合体*2を取り出す作業である。
福島第1原発の事故発生時、1~4号機の原子炉建屋上部にある使用済み燃料プールには、発電に使用された使用済み燃料集合体が水につかって保管されていた。この取り出し作業も、廃炉措置に向けた重要な作業の1つ。事故時に運転停止中だった4号機は14年12月に同作業が完了しており、次に取り出しが行われたのが、水素爆発で原子炉建屋が損壊した3号機だった。同建屋の天井に乗っているかまぼこのようなドーム屋根は、使用済み燃料プールから安全に燃料集合体を取り出し、敷地内の共用プールに移送する作業のために建てられたものだ(図1)。
燃料集合体を水中で一時的に保管・冷却する場所。原子炉建屋の上部に位置する。事故当時、3号機の同プールには使用済み燃料514体、新燃料52体があった。
原子炉に核燃料を出し入れする際に、取り扱いの最小単位となる製品。核燃料はペレットと呼ぶ直径10×高さ10mmの円筒形。複数個のペレットをジルコニウム合金製の被覆管に詰めて燃料棒とし、さらに複数本の燃料棒をまとめたのが燃料集合体。
この3号機における作業で活躍していたのが、東芝エネルギーシステムズ(川崎市)が開発した燃料集合体取り出し用の「つかみ具」だ(図2)。燃料集合体のハンドルをフック状の機構で引っ掛けて捉える治具である。ドーム内部では他にも数多くの設備が活躍するが、つかみ具は燃料集合体とじかに接触するという意味で、重要な役割を果たした。