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 業務システムにおけるバックアップの手順は、一度決めたら後から修正するのはまれだ。多くの企業で大昔の手法に基づいたバックアップが今も行われているはずだ。実はこの10年で、バックアップ技術は一変した。もし今、バックアップを見直すのであれば「新常識」を理解しよう。

 過去10年でITインフラストラクチャーを取り巻く状況は大きく変化した。2010年前後にサーバー仮想化技術を利用するのが当たり前になり、2010年代の中ごろからクラウドへの移行が一気に加速した。2010年代の後半にはコンテナをはじめとするクラウド・ネーティブ・アーキテクチャーが台頭するようになった。こうしたITインフラの進化に合わせて、バックアップ技術も大きく変化した。

ITインフラストラクチャーの進化に伴うバックアップ常識の変化
ITインフラストラクチャーの進化に伴うバックアップ常識の変化
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 バックアップソフトウエア大手、ベリタステクノロジーズの高井隆太常務執行役員は「仮想化技術の普及によって、バックアップの仕組みは大きく変わった」と指摘する。米VMware(ヴイエムウェア)の「vSphere」のような仮想化プラットフォームが高度なバックアップ機能を備えることで、ITインフラストラクチャーとバックアップソフトウエアの関係が変わった。そしてそれに伴いバックアップの対象や単位、手法なども一変した。

バックアップの主役が仮想化プラットフォームへ

 仮想化以前の世界においては、バックアップの主役は「NetBackup」や「Arcserve」といったバックアップソフトが提供するエージェントだった。バックアップ対象のサーバーにエージェントをインストールし、サーバー上のデータ更新などをエージェントが監視して、バックアップサーバーへとデータをコピーしていた。

仮想化前後で比較したバックアップ技術の変化
仮想化以前仮想化以後
バックアップの主役バックアップソフトウエアのエージェント仮想化プラットフォーム
バックアップの対象物理マシンVHD(仮想ハードディスク)ファイル
バックアップの単位ファイルブロック
バックアップの世代管理フルバックアップ+増分永久増分

 一方、vSphereなど仮想化プラットフォームは、仮想マシンのデータを保護する高度なバックアップ機能を搭載し、それらの機能をAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で外部から利用可能にした。vSphereの場合であれば「vSphere Storage APIs」である。仮想化プラットフォームのバックアップ機能が非常に強力だったことから、バックアップソフトは仮想化プラットフォームのAPIを利用するようになり、バックアップの主役が交代した。

 バックアップの主役が仮想化プラットフォームになることで、3つのポイントが大きく変わった。まずバックアップの対象が物理マシンから、仮想マシンのVHD(仮想ハードディスク)ファイルに変わった。またバックアップの単位が、ファイルからストレージボリュームにおけるブロックへと変化した。

「永久増分」が一般的に

 仮想化以前のバックアップにおいては、バックアップの単位はファイルであり、同一ファイルが複数回更新された場合は、バックアップのたびにファイル全体をコピーしていた。それに対して仮想化以後におけるバックアップの単位は、ファイルよりも粒度が小さいブロックである。同一ファイルが複数回更新された場合でも、ファイル全体ではなく更新があったブロックだけコピーするようになった。これによってバックアップの世代間における重複排除が可能になった。

 重複排除によって、バックアップの世代管理も大きく変わった。仮想化以前のバックアップにおいては世代管理は「フル(完全)」「差分」「増分」で行うのが一般的だった。それに対して仮想化以後のバックアップにおいては「永久増分」が一般的になった。