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 新型コロナウイルス感染症の騒ぎが収束後、世界の製造業は生き残りを懸けた激しい競争時代に突入する。日本企業が競争力を維持し、より高めるには、今後のものづくりを担う若手技術者の実力向上が不可欠だ。そのために解決が必要な課題は「守(しゅ)編」で抽出した「ブラックボックス化」である。では、この課題にどう立ち向かったらよいのか。大手部品メーカー出身の実務経験が豊富なベテランに、各専門分野の見地からソリューションを語ってもらう。

座談会のメンバー
座談会のメンバー
さまざまな企業に開発設計や教育支援を行っているワールドテック(名古屋市)に在籍。大手部品メーカーにおいて製品の開発設計から量産、トラブル対応までさまざまな実務経験を持つ。豊富な経験と知見を基に、コンサルタントとして活躍中。(イラスト:穐山 里実)
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実体験を踏まえた皆さんの鋭い観察眼から、今のものづくりの現場は「ブラックボックス化」という大きな課題を抱えていることが見えてきました(前回はこちら)。仕事の規模が大きくなり、技術が高度かつ複雑になっている中では、生産効率を高めるためにブラックボックス化は避けられない。ただし、その“副作用”として論理的に分からない部分ができてしまい、それが品質不具合につながる危険性があると。では、ものづくりの各現場で働く若手技術者はどう対応すればよいのでしょうか。そのソリューションについて教えてください。

ブラックボックスのまま放置してはいけない

山田氏(材料技術の視点)
山田氏(材料技術の視点)

 どの日本企業も経営リソースが限られている中で、ブラックボックス化によって生産効率を上げている。この現実を完全否定はしませんし、利点も分かります。それでもやはり、技術者としてはブラックボックスとして放置したまま仕事をしていてはいけないと思います。もちろん、隅から隅まで理解せよとは言いません。しかし、少なくともブラックボックスの中にある「技術的な本当の意味」だけは把握すべきです。それを頭に入れずに製品を造るわけにはいきません。品質を維持する上でのネック(難点)となり、何が起きるか分かりません。

佐藤氏(生産技術の視点)
佐藤氏(生産技術の視点)

 さすがに、過去にブラックボックスをつくった人のレベルまで中身を完璧に把握することを、今の若手技術者に求めるのは酷だと思います。しかし、ブラックボックスの本質の部分に含まれている「これだけは重要」というものだけに絞ってでも、きちんと若手技術者は把握すべきですし、組織的にも伝承すべきでしょう。もちろん、簡単ではありません。しかし、逆に言えばこうした伝承ができれば、競争力の高い企業になれると思います。


山田氏(材料技術の視点)
山田氏(材料技術の視点)

 材料に関して言えば、ブラックボックスをなくすために、あらゆる材料の特性を知ろうと言っても無理があります。しかし、設計で使う材料については、決してブラックボックスのまま使ってはいけません。

 設計において実現したい機能があり、そのためにある材料を使用する必要がある。しかし、自分はその材料についてよく知らない。こうした場合、まずは社内で専門家を探して相談します。社内に専門家が見つからなければ、材料メーカーを探しましょう。そして、どこまで情報を開示できるかは企業秘密との兼ね合いもありますが、自分が設計で実現したいことをできる限り材料メーカーに伝えつつ相談する。熱意を持って真摯に相談すると、その情熱は材料メーカーにも伝わり、良いアドバイスをもらえるものです。

 「餅は餅屋」と言う通り、材料メーカーは大抵の材料についてユーザーよりも先回りして知識を備えています。ユーザーのニーズをよく研究しているからです。ユーザーが情報を開示すると、「そういうことなら、こんな材料はどうでしょうか」と新たな材料を紹介してくれることもあります。従って、材料メーカーとうまく連携できる人脈を構築したり、自社と材料メーカーをつなぐ“パイプ役”的な人材を用意したりしておくことが、材料に関するブラックボックスの解消に役立ちます。