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 新型コロナウイルス感染症の騒ぎが収束後、世界の製造業は生き残りを懸けた激しい競争時代に突入する。日本企業が競争力を維持し、より高めるには、今後のものづくりを担う若手技術者の実力向上が不可欠だ。そのために、若手技術者が心掛けるべきことは何か。大手部品メーカー出身の実務経験が豊富なベテランから、次代を担う若手技術者にヒントを提供してもらう。

座談会のメンバー
座談会のメンバー
さまざまな企業に開発設計や教育支援を行っているワールドテック(名古屋市)に在籍。大手部品メーカーにおいて製品の開発設計から量産、トラブル対応までさまざまな実務経験を持つ。豊富な経験と知見を基に、コンサルタントとして活躍中。(イラスト:穐山 里実)
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ここまで、[1]守(しゅ)編で課題について、[2]破(は)編で解決方法について伺いました。最後に、[3]離(り)編として、これからの時代にどのように仕事に立ち向かっていったらよいのか。若手技術者が力を伸ばし、成長につなげる方法について、豊富な知見からのアドバイスをお願いします。

山田氏(材料技術の視点)
山田氏(材料技術の視点)

 今はもう言わないかもしれませんが、かつて「カンジニア」という言葉がありました。「カン」というのは、勘や感性、要するに技術に対するセンスということです。センスを磨かなければ、良い設計はできません。センスを磨くには、いろいろなものを触って、経験する。そして、自分の領域にとらわれず、さまざまなことに興味を持って知識を得ることが重要だと思います。

 昔、上司に「私はたくさんのものを見て、触って、時には舐めて、それこそ五感を使ってものと向き合ってきました。だから、六感が働くんです」という冗談を言ったことがあります。上司にも大変ウケました。若い技術者にもこうした感性を磨く姿勢を持ってもらいたいなと思います。

佐藤氏(生産技術の視点)
佐藤氏(生産技術の視点)

 ベテランや経験者の立場から若い人に何か言うというのは、私はあまり好きな方ではありません。上からものを言っていると取られたり、頑張っている若い人を下に見ていると取られたりするのが嫌だからです。ですので、老人の戯言(たわごと)として聞いてください。

 やはり、触ってみたり、中身がどうなっているかを想像したりする好奇心を若手技術者は大切にしてほしいと思います。例を挙げると、私も半導体部門に在籍していた時、今では常識になっているプラズマを使って薄膜を造る装置が故障したのをよいことに、バラ(分解)してみたことがあります。それはもう、とても面白かった。半導体の世界なのですが、中に入っているプラズマの発生部分やノズルの部分は、機械系技術者や材料系技術者にとっても、すごく面白いと思います。蓋を開けて、中を見る。においを嗅ぐ。手で触る。こうした技術者としての好奇心をぜひ伸ばしてほしいと思います。

芳野氏(品質保証、回路設計の視点)
芳野氏(品質保証、回路設計の視点)

 私も皆さんの言う通り、ものを見て、においを嗅いで、触ってみる。そのために現場にできる限り足を運ぶということがとても重要だと感じます。今は、それがなかなかできない状況になりつつあるのかもしれません。それでも、ぜひ、自分の設計したものがどうなっているのかをできる限り自分の目で見て、実感として捉えるように心掛けてください。

佐藤氏(生産技術の視点)
佐藤氏(生産技術の視点)

 分業化やシミュレーション技術が進んだ結果、業務上は見なくても仕事ができるようになっているかもしれません。シリコンウエハーの生産ラインなんて、見ても白い冷蔵庫のような四角い装置が並んでいるだけで、中は何も見えません。オフィスに座っていても、それらの装置がどのように動いているのか、今自分が流しているものがどこにあるのかといったことは、現場に行かなくても全て分かります。

 たとえそうであったとしても、あえて行って「見せてください」と言ってみてください。それで若い技術者がどう思うかは分かりません。分かりませんが、私はそうしてみた時に、ちょっと面白い、違う世界を見て視野が広がったような気がしました。