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 1996年、東京の南青山に産声を上げたラーメンチェーン「麺屋武蔵」。日本では2021年3月時点で全15店舗を東京都に構え、他の地域には出店していない。地方の客や外国人旅行客に、東京限定のプレミアム性を出すためという。店舗での顧客体験を重視し、コロナ禍以前はECを導入することはなかった。

 だがコロナ禍を受け急きょECサイトを立ち上げ、店の味を家庭に届けたいと試行した。図らずも体験したEC運営が、企業向け商品の開発やライブコマースなどの企画に目を向けるきっかけになっている。

東京・神田にある「麺屋武蔵 神山」。4階建てのビルを1棟借りしている
東京・神田にある「麺屋武蔵 神山」。4階建てのビルを1棟借りしている
(出所:特記以外は日経クロステック)
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 麺屋武蔵の矢都木(やとぎ)二郎社長はコロナ禍の影響について次のように話す。「2020年2月に売り上げが2割減となり、3月に7割減まで落ち込んだ。4月に入って感染拡大が長引きそうだと考え、増収策の検討や資金繰りに奔走した。このまま何もしないと倒産の危機にひんすると感じた」。

 2020年4月に入って始めたのは、生麺と具材、スープの「お土産ラーメンセット」の店頭販売である。続いて自社のWebサイトで販売を始めた。Webサイトの問い合わせフォームに注文をもらい、メールでやりとりして入金を確認し商品を送る。「30~40件の注文を受け、自分で対応していた」(矢都木社長)。

 4月中旬にはデリバリーも始めた。当時、「Uber Eats(ウーバーイーツ)」には飲食業者からの申し込みが殺到し、サービス開始に時間を要していた。そこで、矢都木社長は「Chompy(チョンピー) 」という新興のフードデリバリーサービスを利用することにした。

2時間かからずECサイトを構築

 その縁が、ECサイト構築サービスの「BASE」につながる。Chompyの関係者から聞いてBASEを知り、2020年4月末に麺屋武蔵のECサイトを開設することに至ったのである。

 「インターネットでBASEを検索して設定を始め、ショップ開設までに2時間かからなかった」と矢都木社長は語る。麺屋武蔵のWebサイトに注文や決済の機能を持たせたら、納期は数週間、開発費は100万円単位でかかるとWebサイトの制作会社から聞いていた。BASEの場合、利用料は売り上げに発生する手数料のみで初期費用はかからない。気軽に始められたとする。

ECサイト構築サービス「BASE」の登録画面
ECサイト構築サービス「BASE」の登録画面
(出所:麺屋武蔵)
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 矢都木社長自身が開設したECサイトで「濃厚つけ麺3食セット」を販売したところ、ゴールデンウイーク中に約400セットが売れ、反応は上々だった。店長たちは商品の梱包作業に汗を流した。店の売り上げが落ち込んでいた時期だったので、事業運営の助けになった。

 2020年5月25日に緊急事態宣言が解除されて以降は、店舗に客が戻っていった。2020年7月に前年同月の約7割、同年11月には同約8割までに回復した。売り上げ構成は全体の80%強が店内、15%がデリバリー、数%が通販(ECなど)だった。その後、東京の感染者が増えて人が外出を控えると、通販の売り上げが伸びるという状態だった。