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 伊勢神宮の参道で飲食店と土産物店を経営するゑびや(三重県伊勢市)は、創業100年以上の老舗だ。ゑびや大食堂とゑびや商店を名乗る。

 ゑびや大食堂では、「てこねずし定食」や「伊勢真鯛(まだい)のだし茶漬け」などが人気メニューとなっている。席数は約160席あるが、コロナ禍の影響で平日の客数は120~130人と、以前の250~260人からほぼ半減した。

 観光客の減少を察知したゑびやは、さまざまな手を打った。店内の混雑状況を把握してWebサイトや店頭のサイネージで告知したり、土産物をオンライン接客で販売したりしている。併せて、店舗向けに開発したシステムの外販にも取り組んでいる。

ゑびや大食堂の概観。伊勢神宮から徒歩1分のところにある
ゑびや大食堂の概観。伊勢神宮から徒歩1分のところにある
(出所:ゑびや、EBILAB)
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 ゑびやの小田島春樹社長は2012年から、妻の実家である同店の経営に携わることになった。そろばんと手切りの食券を使っていた店舗に「Microsoft Excel」による管理を導入することから始め、売れ行きに関連する情報のデータベース化やPOSレジ導入、機械学習による来客予測、画像解析AIによるデータ収集と、データ活用のレベルを上げていった。

 店頭に設置したセンサーで通行量をカウントし、食堂への入店率を計算する。商店に設置したカメラでは入店者数を数え、売れた商品や入店購買率を把握する。さらに、天気、気温、観光関連のデータサービス「観光予報プラットフォーム」が提供する宿泊予想データなどを日々取得し、来店客数の予測や食事メニューの販売予測の精度を高めている。

 例えば、翌日の来店客数を90%以上の精度で当てることができるという。こうしたデータ活用のノウハウをため、ゑびやは同社のシステム部門を2018年6月に分社化し、飲食店向けクラウドサービスを提供するEBILABを設立した。

コロナ禍を受けて客層が変化

 ゑびやはコロナ禍にどう立ち向かったのだろうか。

 ゑびやは、2020年4月の緊急事態宣言より前に伊勢神宮の参道から人が消えていくのを認識していた。体感レベルではなく、店頭の画像分析から人数を正確に把握していたのだ。

ゑびや前の通行量を計測したデータ。2020年4~6月はほとんど通行客がいない
ゑびや前の通行量を計測したデータ。2020年4~6月はほとんど通行客がいない
(出所:ゑびや、EBILAB)
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 同社によると、コロナ禍以前に訪れる客は首都圏や関西の大都市圏からが多かったが、緊急事態宣言を受けて旅行客が大幅に減った。世代で見ると、40歳以上が6割だったが、コロナの感染が拡大してからは30歳以下が65%を占めるようになった。「この変化を最速でつかんだ」と小田島社長は話す。

 対策としてまず実行したのが、10~30代を意識した食堂のメニュー開発である。例えば、SNS(交流サイト)映えを意識した盛り付けの海鮮丼「海宝飯」に1738円(税込み、以下同)から3608円まで3種類のメニューを用意した。また、660円でうどんの単品販売を開始した。次に、旅行客をターゲットとした大都市圏の広告を解約して余分な経費を減らす一方で、若者に受け取ってもらえるよう、うちわ型のチラシを店頭で配布して認知度を高めた。