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 電子機器や半導体の分解・分析を通じて、商品(もの)の歴史をたどり、アートとテクノロジーの視点から様々なことを文章とともに音声番組(Webラジオ)で紹介するコラム「分解・半導体から見るアーテジー(ART2EGY)の世界」を開始します。外出が難しい昨今、日経クロステック読者のみなさんに「ながら聞き」で理解を深めていただけるような構成にしました。

 コラム名にある「ART2EGY」とは、Art(アート)とTechnology(テクノロジー)の融合を意味する造語です。アーテジーという名称の生みの親であるテカナリエ 営業本部長の小池樹里杏さんと、同社代表取締役CEO(最高経営責任者)の清水洋治さんが本コラムを担当します。

 清水さんは、日経クロステックにたびたび登場する半導体分野の専門家。一方、小池さんは、俳優・演出家・脚本家でありながら、エレクトロニクス業界に飛び込み、「半導体アーティスト」として活動する異色の経歴の持ち主です。

 そんな二人が届ける第1回のテーマは、米Apple(アップル)とソニーの最新ワイヤレスヘッドホンです。アップルが2020年12月に発売した「AirPods Max」と、ソニーが同年9月に発売した「WH-1000XM4」を取り上げます(図1)。いずれもアクティブ・ノイズ・キャンセル機能を搭載した人気製品です。

図1 左が「AirPods Max」、右が「WH-1000XM4」
図1 左が「AirPods Max」、右が「WH-1000XM4」
(出所:アップルとソニー)
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 AirPods Maxはアップルブランド初のオーバーヘッド型ヘッドホンというだけではなく、6万1800円(税抜き)と高価なことから注目を集めています。ソニーのWH-1000XM4は、アクティブ・ノイズ・キャンセル機能で人気を博する同社ヘッドホンシリーズの最新製品で、発売時の価格は4万4000円前後でした。この2つの製品をテカナリエが分解・分析。そこから見えてきた両製品の違いや、アップルとソニーの音響製品に対するアプローチの違いなどについて読み解き、前編と後編の2回に分けてお届けします。

 前編では、AirPods Maxが高価な理由やWH-1000XM4のコスト抑制の工夫、そして両製品のデザインの特徴などについて取り上げます。例えば、AirPods Maxが高価な理由は、ヒンジ部分など、メカ部品を多用した複雑な構造を採用したことや、左右のヘッドホンユニットに多数の半導体部品を搭載したことがあります(図2図3)。そのため、電子機器分解の専門家であるテカナリエをもってしても、分解を終えるまで1時間もかかったそうです。

図2 AirPods Maxを分解
図2 AirPods Maxを分解
スピーカーなどを取り外した(出所:テカナリエ)
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図3 AirPods Maxのスピーカーユニットを分解
図3 AirPods Maxのスピーカーユニットを分解
(出所:テカナリエ)
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 一方ソニーのWH-1000XM4は、シンプルな構造で主要な半導体部品は左側のヘッドホンユニットのみに搭載していました(図4)。半導体部品(機能チップ)の数で比べると、AirPods Maxは26個だったのに対して、WH-1000XM4は半分以下の11個だったそうです(図5)。分解時間にかかった時間はわずか5分ほどでした。

図4 WH-1000XM4を分解したところ
図4 WH-1000XM4を分解したところ
(出所:テカナリエ)
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図5 AirPods MaxとWH-1000XM4の違い
図5 AirPods MaxとWH-1000XM4の違い
(出所:テカナリエ)
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 詳細はぜひ、番組をお聞きいただければと思います。それでは後編もお楽しみに~。