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 電気自動車(EV)を筆頭に、走行時の二酸化炭素(CO2)の排出量を抑える電動車「脱炭素モビリティー(脱炭素車)」。その利便性を高める取り組みにカーボンニュートラル(炭素中立)の追い風が吹いている。

 EVの場合、これまでは充電時間の長さが使い勝手を損ねてきた。この弱点の解消を目指すのが、「交換式電池」の仕組みだ。充電済みの2次電池パック(以下、電池パック)を乾電池のように入れ替える(図1)。交換時間は短いケースで10秒未満。そのため、航続距離が“無限”であるかのように連続して走れる。1個の電池パックを多用途で使い回せばコストに優れる上、環境にも良い。 

図1 電池パックを手作業で交換する
図1 電池パックを手作業で交換する
ホンダが手掛ける交換式のリチウムイオン2次電池「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」。慣れれば10秒未満で交換できる。写真はリース販売の2輪EVバイク「PCX ELECTRIC」における電池交換の様子。電池パックの情報は取材時点に基づく。(出所:日経クロステック)
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 先導するのはホンダだ。2021年3月1日、同社はヤマハ発動機と伊Piaggio(ピアッジオ)、オーストリアKTMと共に、小型電動モビリティー向けの電池共通化に向けた協議体を設立すると発表した。同年5月にも立ち上げる。2輪車に加えて、小型の3輪車や4輪車への適用も念頭に置く。国内でもホンダは、ヤマハ発動機やスズキ、川崎重工業と4社での協議体を設立済みだ。仲間づくりの輪を広げつつある。

容量1kWhの交換式電池

 ホンダが手掛ける交換式の電池パックは、1個当たりの容量が約1kWh。質量は約10kgである。パナソニックから調達した円筒型のリチウムイオン2次電池セル(以下、電池セル)で構成している。電池パックの寸法は、実測値でおよそ全長145×全幅170×全高300mmである。電圧が48V系の電池パックで、搭載時には直列に複数個つないでシステムとしての電圧を高める。

 10kgと重いのは、安全性に考慮した設計だからだ。円筒型の電池セルを組み合わせて保持器に収め、強度を高めるために電池管理システム(BMS)と共に補強骨格で囲う。さらに同骨格を丸ごと外装で覆った。これにより、電動バイクに関する国際規則「UN-R136」が求める、高さ1mから自然落下させても発煙・発火しない性能を達成している。

 ホンダは同電池パックを多用途で使う。市場投入済みの2輪EVバイク「PCX ELECTRIC」や「BENLY e:(ベンリィ イー)」をはじめ、21年春以降に3輪EVバイク「GYRO e:(ジャイロ イー)」、「GYRO CANOPY e:(ジャイロ キャノピー イー)」にも採用して発売する。ゆくゆくは、小型4輪EVや家庭用の電源として使う構想も持つ。

トヨタも社内議論

 交換式電池の優位性にはトヨタ自動車(以下、トヨタ)も着目しており、社内で議論を交わしてきた。同社が狙うのは、駆動用の電池パックの寸法を規格化して取り換えやすくする「電池シェア」と呼ぶ仕組みである。

 例えば、超小型EV(マイクロEV)の電池パックとして5~7年使った後に、建設機械や家庭用の蓄電システムに転用して8~10年稼働させる。つまり、同じ電池パックを使い回しながら合計15年ほど使い続ける構想である。コストの負担を各用途で分散させ、超小型EV自体のコストを抑える。

 なぜ、ホンダやトヨタが交換式電池に取り組むのか。その理由は、大きく3つの利点があるからだ。