全2827文字
PR

 「カーボンプライシング」への注目度がビジネスパーソンの間で急速に高まっている。導入議論が今後、本格化することが必至だからだ。カーボンプライシングは企業にとって新たなコスト負担となり、業績や事業活動に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 カーボンプライシングは「炭素の値付け」とも呼ばれる。温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)の排出にコスト負担を加える制度の総称であり、代表的なものに炭素税や排出量取引、炭素国境調整措置(後述)などがある。炭素税は、温暖化ガスの排出量に応じた税率を設定して課税する制度のこと。排出量取引は、温暖化ガスの排出枠(キャップ)を設定する制度のことで、排出枠の上限を超えた企業がその分を補うために枠を別途購入してコストを負担する。つまり、炭素税や排出量取引などのカーボンプライシングは温暖化ガスの排出量などに応じたコストを付加し、企業などに気候変動対策を促すことを狙っている。

カーボンプライシングの特徴
カーボンプライシングの特徴
カーボンプライシングは炭素税や排出量取引、炭素国境調整措置などの制度の総称である。各々の制度には特徴と課題があるため、温暖化ガス削減に向けて複数の制度が導入される可能性がある。(出所:環境省)
[画像のクリックで拡大表示]

 ただし、各制度は期待される効果や課題が異なる。例えば、炭素税は税収などが予測しやすく、税収を利用したカーボンニュートラル(炭素中立)への投資がしやすいという利点を持つ。その一方で、温暖化ガスの削減量を見通しにくいという課題がある。そこで各国は複数の制度を組み合わせたカーボンプライシングにより、気候変動対策を実施していくとみられる。日本では今、経済産業省や環境省が、そもそも制度を導入すべきか、導入するならばどう制度を組み合わせるべきかなどの意見を有識者から集めている状況だ*1

*1 経済産業省と環境省は、炭素税や炭素国境調整措置などを含めたカーボンプライシングの検討で活発な動きをみせている。環境省は2019年7月で一区切りついていたカーボンプライシングに関する会議を2021年2月に再開。経済産業省も環境省とは別に、同年同月からカーボンニュートラルの実現を狙う研究会を新たに設置した。両省とも「企業も国会議員もカーボンプライシングを含めたカーボンニュートラルへの関心が非常に高い」と述べている。経済産業省と環境省の両省で議論を進めていく目的としては、産業界の意見を集約しやすい経済産業省と、以前からカーボンプライシングなどの検討を進めてきた環境省で別のアプローチで討論していくため。最終的には両省の意見を政府が集約していく。