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 充放電して使える2次電池が、カーボンニュートラル時代に入った今、市場の期待を一身に集めている。理由は大きく2つある。1つは、再生可能エネルギーの調整に必須だからである。太陽光発電や風力発電は発電量が天候によって大きく左右されるため、需給バランスを整えるために大容量の蓄電設備をセットで用意する必要がある。実際、経済産業省が中心となって2020年12月にまとめた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においても、再生可能エネルギーの推進と共に蓄電池(2次電池)の活用が明記され、蓄電池産業を成長産業と位置付ける方針が示されている。

政府が公表した蓄電池産業などの成長戦略の工程表
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政府が公表した蓄電池産業などの成長戦略の工程表
蓄電池産業への投資支援や定置用電池の導入支援を掲げている。(出所:経済産業省)

 もう1つの理由は、自動車の電動化のキーデバイスだからだ。中でも注目の的は、電気自動車(EV)の駆動用2次電池だ。日本政府が2030年代半ばまでにガソリンエンジン車の販売を禁止する方針を打ち出したことが、同電池への注目度をさらに高めている。

 だが、現行のリチウム(Li)イオン2次電池は、カーボンニュートラル時代の市場の期待に十分には応えられない*1。そこで開発が進んでいるのが、次世代電池だ。次世代電池とは、現在主流のリチウムイオン2次電池よりも安全性と性能(エネルギー密度)を高め、かつコストを抑える新型の2次電池のことである

*1 現行のリチウムイオン2次電池の多くは可燃性の有機電解液を使っている。そのため、条件次第で発火や爆発の可能性が残る。加えて、エネルギー密度の大幅な向上が見込めず、質量エネルギー密度は280Wh/kg程度、体積エネルギー密度は800Wh/L程度で頭打ちになるとみられている。さらに、正極材料にコバルト(Co)やニッケル(Ni)といった希少な金属を使うため、コスト低減にも限界がある。

 次世代電池は、用途に応じて適材適所の使い方が想定される。例えばEVでは、限られたスペースに駆動用2次電池を収納するため体積エネルギー密度に優れた次世代電池を使い、定置用では大容量が要るためコストの低い次世代電池を使用するといった具合だ。

車載では全固体が最有力か

 次世代電池の代表格であり、主にEVでの使用を見込むのが「全固体リチウムイオン2次電池(以下、全固体電池)」である。自動車メーカーや電機メーカーなどが開発を急いでいる。全固体電池は、現行のリチウムイオン2次電池の液体電解質を固体電解質に置き換えたもの。液漏れのリスクが減るため安全性が高い上に、エネルギー密度が液体電解質のリチウムイオン2次電池を上回る可能性がある。本命は、車載用など大型製品だ。トヨタ自動車は20年代前半の実用化を目標に掲げ、同社とパナソニックが設立した車載用電池を手掛けるプライム プラネット エナジー&ソリューションズ(東京・中央)が開発を進めている。

 開発で先行するのが、ウエアラブル機器などの小型製品への搭載を想定した低容量の全固体電池である。既に量産やサンプル出荷を開始した例がある。TDKは電流容量が0.1mAhの製品を量産中で、マクセルは8mAhの製品を量産予定である。村田製作所は25mAhの製品を「21年度前半に少量ではあるが量産開始する予定」(同社)という。

 これらを超える電流容量となりそうなのが、日立造船の製品だ。同社は1000mAhと「対外的に発表されている全固体電池では世界最高クラスの容量」(同社)のセルを公開し、「まもなくサンプル出荷を開始する」(同社)計画だ。1000mAhという容量は、現在の一般的なスマートフォン用バッテリーの25~35%程度に相当する。ただし、エネルギー密度には課題がある。質量エネルギー密度が非公表で、体積エネルギー密度が約91Wh/kgと、一般的なリチウムイオン2次電池(同500Wh/kg以上)を大きく下回っている。

日立造船が開発した1000mAhの全固体電池
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日立造船が開発した1000mAhの全固体電池
(出所:日経クロステック)