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 レジ袋に続き、プラスチック製スプーンも有料化か──。2021年3月9日に日本政府が、プラスチックごみの削減やリサイクルの促進を目指す「プラスチック資源循環促進法案」を閣議決定するや否や、そのニュースが一般家庭に駆け巡った。テークアウトの食品や飲料と共に提供される使い捨てのプラスチック製スプーンやフォーク、ストローなどの有料化を検討することで「ワンウェイ(使い捨て)プラスチック」の使用を削減し、プラスチックの資源循環を促す。「新法でプラスチックごみが出ない社会を目指す」と小泉進次郎環境相は力を込める。

2019年の東京モーターショーを訪れた小泉環境相(左)
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2019年の東京モーターショーを訪れた小泉環境相(左)
植物由来の材料であるセルロースナノファイバーで造ったコンセプト車を視察した。(出所:日経クロステック)

 プラスチック全体の使用量から見れば、レジ袋もプラスチック製スプーンも使用量はごく限られている。だが、産業界に与えるインパクトは想像以上に大きい。ごく身近な物だからこそ人々の意識が変わりやすく、消費行動ががらりと変化する可能性があるからだ。消費者のイメージを損なえば、製品は売れなくなってしまう。

抜群の好印象を与える「植物由来」という言葉

 二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えるカーボンニュートラル(炭素中立)時代に、一般の消費者に抜群の好印象を与えるのが「グリーン材料」だ。グリーン材料は環境負荷軽減に貢献する材料の総称で、特に炭素中立の条件を満たす植物由来の原料を使った材料を指す。その代表格にバイオマスプラスチックがある。

 バイオマスプラスチックは、植物をはじめ再生可能な生物由来の有機性資源(化石資源を除く)である「バイオマス」を原料とするプラスチックのことだ。いわゆるバイオプラスチックの一種である。バイオマスプラスチックに含まれる炭素は植物が空気中のCO2から取り込んだものだから、燃やしてCO2が発生してもCO2は増えていないとみなせる。すなわち、炭素中立に寄与するというわけである。

 バイオマスプラスチックの実用化の事例を増やしているのが三菱ケミカルだ。同社が開発した「DURABIO(デュラビオ)」が、ダイハツ工業の小型SUV(スポーツ多目的車)のステアリング部品(ステアリングスイッチベゼル)と、いすゞ自動車の小・中・大型トラック「ELF」「FORWARD」「GIGA」の外装部品(交差点警報およびブラインドスポットモニター用レーダーカバー)へと立て続けに採用された。

三菱ケミカルのバイオマスプラスチック製部品を採用した自動車(上)とトラック(下)
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三菱ケミカルのバイオマスプラスチック製部品を採用した自動車(上)とトラック(下)
植物由来のイソソルバイドを原料としたプラスチック。自動車はステアリングスイッチベゼルに、トラックは交差点警報およびブラインドスポットモニターのレーダーカバーに使った。(出所:三菱ケミカル)

 DURABIOは、植物由来でありながら構造材や機械部品に利用可能なエンジニアリングプラスチック(エンプラ)*1に位置付けられる。主原料は、トウモロコシや小麦など植物由来のでんぷんや糖から造られる化合物であるイソソルバイド。エンプラであるポリカーボネート(PC)並みの耐熱性や耐衝撃性と、汎用プラスチックであるアクリル樹脂〔ポリメチル・メタクリレート(PMMA)〕並みの高い透明性やUV(紫外線)耐性(耐候性)を持つ上に、傷つきにくい特性(耐擦傷性)も備える。これらの高い特性に加えて、塗装工程を省ける利点が顧客の支持を集めている。

*1 エンジニアリングプラスチック 機械的強度や耐熱性を高めたプラスチック。