全2114文字
PR

 「(総務省幹部への接待は)国家公務員倫理法上、問題ないと考えていた。大変認識が甘く申し訳なく思っている」――。

 2021年3月16日の衆院予算委員会に参考人として出席したNTTの澤田純社長は、前日の参院予算委員会に続き、このような弁明を繰り返した。総務省官僚ナンバー2の更迭・辞職につながった今回の接待問題。2日にわたる国会質疑から見えてきたのは、NTT、総務省の双方でルールを軽視していた実態だ。国民の信頼回復に向けた道のりは遠い。

2日にわたり参考人として国会質疑に答えたNTTの澤田純社長
2日にわたり参考人として国会質疑に答えたNTTの澤田純社長
(出所:参議院インターネット中継画面をキャプチャー)
[画像のクリックで拡大表示]

持ち株会社に会食ルールなく、認識に甘さ

 NTTによる総務省幹部への接待問題の論点は大きく2つある。1つは、なぜ国家公務員倫理法違反が常態化したのか。もう1つは、一連の接待で行政がゆがめられていないかだ。

 国家公務員倫理法に基づく国家公務員倫理規程では、許認可の対象となるような利害関係者からの接待を禁じ、自己負担でも1万円を超える会食は事前の届け出を義務づけている。NTTによる総務省幹部への接待では、許認可対象かつ1万円を優に超える高額な会食が相次いだ。にもかかわらず、接待を受けた側の総務省幹部の事前届け出はなかった。

 3月16日の質疑では、NTT澤田社長に対し「高額な会食場所を指定したことで国家公務員のルール違反を誘発したのではないか。社内で国家公務員に対する会食ルールはなかったのか」との質問が飛んだ。

 NTTの澤田社長は「グループ全体の倫理憲章はあるものの、私が社長を務めるNTTの持ち株会社には、会食に関する具体的なルールがなかった。これが大きな問題であり、これから直していかないといけない」と語った。

 NTT持ち株会社は管理会社であり事業も営業もしない。そのため国家公務員を対象とした具体的なルールがなかった。持ち株会社傘下の事業会社では、国家公務員などとの会食に関する具体的なルールを定めているケースが多いという。この点が、NTTと総務省の「なれ合い」の温床になった可能性がある。

 高額接待の場所についてもNTTの認識の甘さが出た。一連の接待の場となったのは、NTTグループが経営する会員制レストラン「クラブノックス麻布」だ。澤田社長は「孫会社が経営しており、持ち株会社のコストが孫会社の収入となり、連結決算上打ち消される。例えば2万円のコースだと、3分の1ほどの原価だけかかるという意識になっていた。(ルール違反を)誘発する素地の1つになったと反省している」と弁明した。

 NTTと総務省の関係が、1990年代のNTT分割を巡る全面対決から蜜月へと移り変わりつつある点も、ルール軽視を招いた背景にありそうだ。情報通信政策上の課題は、かつての国内市場重視から、現在はGAFAを含めた国際競争へとシフトしつつある。この点についてNTT澤田社長と、2021年3月16日に辞職した谷脇康彦前総務審議官の問題意識は一致していた。

 NTT澤田社長と谷脇氏は、旧郵政省とNTTが全面対決していた1990年代から面識があり、古くから意見交換を重ねてきた節がある。市場環境が激変し、互いの問題意識が一致する中で、ルール軽視の構造が生まれていった可能性もある。