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 総務省の幹部が国家公務員倫理法違反となる接待を受けていた問題は、利害関係者との「なれ合い」が通信放送行政をゆがめた可能性や透明性が疑われる事態に発展している。中でも早期の真相究明が必要として浮上している問題が、東北新社が放送法の外資規制に違反した事実を総務省が「いつ認識したか」だ。

 東北新社の中島信也社長らが参考人招致された2021年3月15日の国会では、中島社長が当時の関係者から聞き取った社内調査に基づき、外資規制に違反した事実を2017年8月に総務省の担当者に報告したと答弁した。一方で、総務省の当時の担当者は一貫して「報告を受けた記憶はない」と答弁し、主張が真っ向から食い違っている。

 仮に総務省が東北新社の外資規制違反の報告を受けていたならば、許認可を与えた事業が違法状態にあることを知りながら黙認した疑いが濃くなる。行政がゆがめられた決定的な事実となり得る。

国会で答弁する総務省の鈴木信也総合通信基盤局電波部長(左)と東北新社の中島信也社長(右)
国会で答弁する総務省の鈴木信也総合通信基盤局電波部長(左)と東北新社の中島信也社長(右)
出所:参議院インターネット審議中継をキャプチャー
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 野党はこれを受け、新たな証人喚問を求めるなど国会では今後も追求が続く見通しだ。総務省も一連の接待が行政にどう影響したかを調査する「情報通信行政検証委員会」を立ち上げ、2021年3月17日に初会合を開いた。同委員会の座長を務める吉野弦太弁護士は「東北新社のケースでは衛星放送事業の認定と外資規制違反の認識が議論すべき対象の1つ」としており、検証での大きな焦点となる。

東北新社は「2017年8月に総務省へ報告」

 東北新社の外資規制違反は、2021年3月5日の参院予算委員会における立憲民主党の小西洋之議員の指摘で明らかとなった。違反をしていた放送事業は、東北新社が2017年1月に総務省から認定(衛星放送チャンネルを持つ事業許可)を受け、2018年12月に放送が始まったBS(放送衛星)での4K放送チャンネル「ザ・シネマ4K」である。

 東北新社が同チャンネルの提供を申請したのは2016年10月17日。その直前となる2016年9月末時点で同社は外資比率が20.75%に達していた。放送法は第93条第1項で放送事業者の議決権に占める外国資本の割合を20%未満とする規制を定めている。総務省は外資規制違反を理由にこの時点で東北新社の認定申請を拒否すべきだった。しかし総務省は2017年1月24日、同社のBS4K放送事業に認定を与えた。

 東北新社は有価証券報告書で外資比率を公表しているにもかかわらず、総務省には虚偽の内容を申請していた。中島社長はその理由を、2021年3月15日の国会答弁で「担当者が外資比率を議決権が1%以上の株主だけで計算するミスを犯したため」と説明している。一方、外資規制違反を見逃した総務省は「審査は事業者からの申請内容を確認するレ点方式を採っていた」ためとする。有価証券報告書の確認などはしていなかった。

 両者の主張が大きく食い違うのは、東北新社が外資規制違反を把握した2017年8月前後の動きだ。社内調査に基づく中島社長の答弁によれば、同社で放送事業を担当する木田由紀夫前執行役員らは2017年8月4日、BS4K放送の認定が外資規制に違反している事実に気が付いた。

 きっかけは東北新社が2017年7月28日に発表した放送事業の再編計画だ。同社は子会社や関連会社などを通じて多数の衛星放送チャンネルを持つ。このうち、BSと同じ受信設備で視聴できるCS放送(BSと合わせて衛星基幹放送と呼ぶ)で提供している3チャンネルを経営の合理化などを目的に東北新社へ集約する計画を発表した。中島社長の答弁によれば、この計画に必要な申請作業などを進める過程で木田前執行役員らが外資規制違反に気付いたという。

外資規制違反を巡る東北新社と総務省の動き
日付出来事
2016年10月17日東北新社がBS4K放送への参入を総務省に申請。直前の2016年9月末時点における外資比率は20.75%であり、放送法の外資規制に違反した状態
2017年1月24日総務省が東北新社のBS4K放送事業を認定。違法状態を見逃していた
2017年7月28日東北新社、出資先企業が放送する既存のCS放送(東経110度CSの衛星基幹放送)3チャンネルを東北新社に集約する計画を発表
2017年8月4日東北新社の木田由紀夫前執行役員らが「BS4K放送の認定が外資規制に違反している事実に気付く」(中島信也社長が国会で答弁)
2017年8月9日ごろ東北新社の木田前執行役員が「外資規制違反を総務省に報告した」(中島社長が国会で答弁)。総務省は「報告を受けた記憶はない」と主張が対立
2017年8月16日東北新社、7月28日に発表したCS放送3チャンネルの集約計画を撤回
2017年9月1日東北新社、全額出資子会社の東北新社メディアサービスを設立。目的は同社にBS4K放送事業を承継して「外資規制違反を治癒するため」(中島社長の国会答弁)。既存のCS放送3チャンネルについても同社に集約する方針へ転換
2017年9月11日東北新社、東北新社メディアサービスへのBS4K放送事業の承継を申請
2017年10月13日総務省、東北新社メディアサービスへのBS4K放送事業の承継を認可。東北新社の出資先企業が運営するCS放送3チャンネルの承継も順次認可
2018年12月1月東北新社メディアサービス、BS4K放送「ザ・シネマ4K」を開始