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 総務省職員による違法な接待が通信放送行政に与えた影響を検証する総務省の第三者委員会「情報通信行政検証委員会」は2021年6月4日、第1次となる報告書を公表した。東北新社の外資規制違反について、「総務省の担当部署は2017年当時に違法状態を認識していながらこれを追認した可能性が高い」として、「放送行政をゆがめたとの指摘は免れない」と結論付けた。

報告を説明する情報通信行政検証委員会の吉野弦太座長(のぞみ総合法律事務所)
報告を説明する情報通信行政検証委員会の吉野弦太座長(のぞみ総合法律事務所)
(撮影:日経クロステック)
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 今回の報告書の主な目的は、東北新社に与えた許認可の検証である。特に2017年8月ごろに東北新社の担当役員が、既に認定済みだったBS4K放送やCS基幹放送を集約する計画が外資規制に違反すると気付いてからの総務省とのやり取りが焦点になった。

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 委員会は、行政資料や職員らの提出資料、東北新社役員ら関係者の証言などを総合し、東北新社の担当役員が2017年8月に外資規制違反の問題を総務省担当者に報告しており、総務省側は違法状態を認識していた可能性が高いと認定した。「可能性が高い」としたのは、「調査に応対した総務省職員が全て(違法状態を認識していたとする委員会の認定を)否定している」(委員会座長を務めたのぞみ総合法律事務所の吉野弦太弁護士)ためだという。

 2017年8月以降、総務省は違法状態だったBS4K放送の認定を取り消さず、CS基幹放送の集約では違法を回避する新たなスキームの申請を受理している。放送行政がゆがめられた要因として、委員会は会食などの接待との関係性も調査したが、「放送行政がゆがめられたとまで認定できる事情を確認できなかった」としている。委員会は別の要因として「違法状態の追認が政策推進になるといった自己正当化」などの可能性も挙げた。

 委員会は「会食がなれ合い意識やムラ意識を醸成した可能性も視野に検証する」として、今後東北新社を追加で調査するほか、新たにNTTとの関係についても調査を進める予定だ。委員会とは別に武田良太総務相が同日会見し、国家公務員倫理規程に抵触する接待について新たな事実を公表し、32人の職員を処分したと話した。