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新型コロナ禍で日本企業のBCPが問われている。調査ではコロナ禍でBCPが機能しない、BCPがない日本企業が4割に達すると分かった。何を軸にBCPをつくり、どのように育てていけばいいのか。先進企業に取材した。

 「5000万人の命を奪った100年前のスペイン風邪など、歴史をひもとくとパンデミック(世界的大流行)は繰り返し起こってきた。事業継続性を100年単位で考えれば、新型コロナも『起こりうるリスク』の1つだ」。

 決済代行や電子契約、セキュリティー、ドメイン名の登録サービスなど「止められない」ネットインフラ事業を幅広く手掛けるGMOインターネット。同社の熊谷正寿会長兼社長は新型コロナ禍におけるBCP(事業継続計画)の考え方についてこう語る。

GMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長(写真提供:GMOインターネット)
GMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長(写真提供:GMOインターネット)
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 同社は遡ること1年以上前の2020年1月27日、新型コロナウイルスの感染拡大に備えてBCPを発動。国内従業員の9割に当たる約4000人を在宅勤務に移行した。

図 GMOインターネットの主な新型コロナ対応策
図 GMOインターネットの主な新型コロナ対応策
在宅勤務移行後もBCPを見直し続ける(出所:GMOインターネットの資料を基に日経コンピュータ作成)
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 この決断は驚きと戸惑いをもって受け止められた。国内にほとんど新型コロナ感染者が出ておらず、入国制限も始まっていない段階だったからだ。

 「本当にサービスを継続できるのか」。数カ月にわたり全社規模の在宅勤務を続けるという前例のない決断に、取引先や株主から問い合わせが相次いだ。

 先見の明があったことは間もなく分かる。みるみるうちに国内で感染が拡大したからだ。政府は2020年4月7日に1度目の緊急事態宣言を発令。規模の大小を問わず全国の企業が在宅勤務を急きょ導入する必要に迫られた。

 コロナ禍でもGMOインターネットの業績は好調だ。2020年12月期は売上高が前年同期比7.3%増の2105億円、営業利益は同10.3%増の279億円と、それぞれ過去最高を更新した。

 デジタル化の追い風を受けてIT産業全体が潤った面はあるが、それだけではない。コロナ禍前からBCPを繰り返し練り、「9割在宅勤務」に移行してからも混乱なくサービスを継続し、顧客からの信頼を勝ち得た点も、この成長を下支えしたとみるべきだろう。

 熊谷会長兼社長は「自然災害やパンデミックはもちろん『もし核戦争が始まったら』というリスクまで、社内で真剣に議論してきた。国際情勢を踏まえれば決して的外れな話ではない」と話す。そして「企業経営に影響を及ぼすリスクを洗い出し、その1つひとつについて対策を考える。そうした習慣や心構えを経営者が常に持っておくことが重要だ」と続ける。

Zoomに移行した定例幹部会で「スピリットベンチャー宣言」を読み上げる様子(写真提供:GMOインターネット)
Zoomに移行した定例幹部会で「スピリットベンチャー宣言」を読み上げる様子(写真提供:GMOインターネット)
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