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ロボットによる物流倉庫の効率化が本格始動している。背景にあるのがEC(電子商取引)の発展だ。ただし、現在は一部の工程にロボットを導入して部分最適化するにとどまっている。目指すのは、現場の管理システムと連携しながら複数・異種のロボットを制御し、機械学習やデジタルツインを駆使しながら全体を最適化する“次世代倉庫”の実現である。

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 そこで最近、物流倉庫において大きな注目を集めているのがAMR(Autonomous Mobile Robot)である注2)。こちらは発注に応じてロボットが固定の棚へ自律的に移動し、作業者を待機。作業者は指定された商品を棚からピッキングしてロボットに載せ、ロボットは次の棚に移動して、最後は出荷エリアまで運ぶ。人間が得意なピッキングは人間に任せ、移動の最適化と搬送をロボットが請け負う。「AMRはLiDARとカメラの情報を基に自律移動する。自動運転の技術が一般化して、それが物流倉庫で応用され始めている」(GROUND代表取締役社長CEOの宮田啓友氏)。

注2)AMRの導入では欧米が先行しており、例えばDHLは20年3月、米Locus RoboticsのAMRを1000台、フルフィルメントセンターに導入すると発表している。LocusはKiva Systemsの早期ユーザーだった倉庫会社から誕生した企業で、先ごろシリーズEの投資を受けて企業評価が10億ドルを超えるユニコーンになるまで成長した。

 これによって作業者が商品を探して歩き回る距離や時間が削減される。また荷主の需要予測に対して実際の出荷物量が上振れした場合でも、ロボットを追加する事で処理能力を高められる。上振れリスクに備えた余剰人員を確保する必要がなくなる。GTPと比較したときのAMRの最大の長所が、既存の倉庫の棚・レイアウトを生かしたまま導入できる点だ。このため、初期投資がかなり安く済み、中小規模の倉庫にも導入できる可能性がある。米ABI Researchは、27年までに商用ロボットの出荷台数の80%がAMRになると予測している。

 国内の物流倉庫にAMRが本格的に導入され始めたのは、20年後半ぐらいからと間もない。国内ではRapyuta Roboticsの「PA-AMR」が日本通運や京葉流通倉庫などに導入されている(図6)。日本通運では1100m2の床面積に対してAMRを10台と作業員を6人、京葉流通倉庫では1900m2に対してAMR20台と作業員50人を配置。「AMRの導入によって生産性が2倍になり、半分の人員で済む」(Rapyuta Robotics 執行役員の森亮氏)。一方、GROUNDが提供する「PEER」はドイツの物流大手DHLの柏物流センターに30台導入されている。いずれも走行速度は人間が歩く速さ程度で最大積載量は45kgだ。

図6 導入の敷居が低いAMRに注目
図6 導入の敷居が低いAMRに注目
既存の倉庫の棚やレイアウトのまま導入できるAMRの採用が大手物流事業者で進んでいる。(a)日本通運の倉庫で、1100m2の床面積をRapyuta Roboticsの「PA-AMR」10台とピッキング作業者6人でカバー。人の移動距離を最小限にすることで生産性が2倍になるという。(b)はドイツDHLの柏物流センターに30台導入されたGROUNDの「PEER」。(写真:Rapyuta Robotics、GROUND)
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