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自動搬送ロボットの実用化に向けて準備が着々と進められている。屋内ではビル内配送などで実証実験が進む。屋外では省庁が規制緩和に乗り出し、公道走行の実証実験が盛んになった。各ロボットの走行性能は一定水準を超え、実証実験の第1段階を突破しつつある。次に焦点となるのは、配送ロボを用いたサービスや業務形態の在り方である。

人を運ぶ“配送ロボ”に活躍の場

 こうした自動搬送ロボット導入への動きは、屋外にも広がってきた。特に公道を走行する実証実験が増え始めている(図5)。背景には、自動搬送ロボットの低価格化や技術の進化だけではなく、経済産業省による公道での実証実験の手続きの明確化といった法令面での要因が挙げられる。

(a)パナソニックとアイン薬局
(a)パナソニックとアイン薬局
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(b)ティアフォー
(b)ティアフォー
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(c)ZMPと日本郵便
(c)ZMPと日本郵便
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図5 公道走行の実証実験が活発に
宅配ロボットの屋外での実証実験が増えてきた。パナソニックは、アイン薬局と処方箋医薬品の配送サービスの実証実験を、 21年3月に神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウンで実施(a)。ティアフォーは、自社の自動運転ソフトウエア「Autoware」を用いた小型自動搬送ロボットによる実証実験を20年12月に岡山県玉野市で実施(b)。ZMPは、日本郵便と配送・集荷業務の実証実験を、20年9~11月に東京都内で実施した(c)。(写真:(a)はパナソニック、(b)はティアフォー、(c)はZMP)

 というのも、自動搬送ロボットは現行の道路交通法や道路運送車両法では扱いが定義されていない。電動車椅子は人の歩行を補助する器具で、道路交通法上は歩行者として扱われるが、自動搬送ロボットは現状、人の歩行を補助するロボットとは別物と位置づけられている。そのため公道走行が認められず、実証実験があまり進まなかった。そこで経済産業省が今後の法整備の対象となるロボットの仕様などをまとめて、実証実験の枠組みを作ったことで、次の一歩を踏み出す企業が増加したのである。

 こうした実証実験で確認する主な項目は、ロボットの走行性能である。公道走行時の路面状況や障害物、通行人、天候などの環境変化がどの程度影響を与えるかを確認する。実際、雨天での利用や急な坂道での走行には、対応できない場合が多い。

 自動運転ソフトウエア「Autoware」を手掛けるティアフォーは、小型車でもAutowareを利用できるかを検証するために、18年ごろから自動搬送ロボットを開発してきたという。20年12月に開発した「Logiee S1」では、より具体的なユースケースの検証へと移行し、公道やビル内の走行試験を重ねている。

 実用化を見据えてサービス内容の検証に取り組んでいる例もある。21年3月に2回目の実証実験を実施中のパナソニックは、20年11~12月実施の第1回で走行性能の技術検証や課題の洗い出しを終え、第2回では有償の配送サービスの内容やロボットの運用などの評価を開始した。サービス設計だけでなく複数台の同時監視や、遠く離れた拠点からの遠隔管制など、より実運用に近い状況で検証を進める。

 さらに、ロボットが街で受け入れられるかといった社会受容性の確認も重要なテーマだ。ロボットの動きが予測できないと人は恐怖を感じる場合もあり、「ロボットがどちらに動くか意思表示をするために前面に“目”を表示させるようにした」(ZMP代表取締役社長の谷口恒氏)。

 パナソニック モビリティ事業戦略室コミュニティMaaS事業推進部モノ搬送サービス事業化PJ主幹の山内真樹氏も「住民に受け入れられるデザインや形状を意識してロボットを設計した」と話す。実証実験を行ったFujisawaサスティナブル・スマートタウンでは、ロボットの周りに通行人が集まるなど、住民の反応は好印象だったという。「人と配送ロボットがどのように共存できるかを探っていきたい」(山内氏)。

無人配送向けに環境を整備

 自動搬送ロボットを用いた屋外での配送サービスを実用化していくには、町ぐるみでの環境整備も必要になる。現在の自動搬送ロボットは歩行者の仲間として歩道を走行しているが、車道と分離されていない道路での安全な走行は課題である。

 日本郵便は、中央の大きな集配拠点と各エリアの小さな集配拠点で、それぞれトラックや配送ロボ、配送ドローンなどを組み合わせた配送サービスを構想する(図6)。それぞれの特性に合わせて役割を分担しながら効率化や省人化を図る。

図6 ラストワンマイルを自動搬送ロボットやドローンが担う
図6 ラストワンマイルを自動搬送ロボットやドローンが担う
日本郵便が構想する無人機を活用した配送サービスの将来イメージ。大きな集配拠点から先の細かいエリアにロボットステーションなどの拠点が作られ、ロボットやドローンなどの無人機を使って配送をする。(図:日本郵便)
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 一般に自動搬送ロボットは連続稼働時間や積載量の関係で、長距離を走行できない。そのため集配担当エリアを細かく区切って、多くの集配拠点を設置する必要が出てくる。しかし、都市部などでは新たに集配所を複数作ることが難しい場合がある。

 そこでZMPの谷口氏は、自動搬送ロボットをトラックで各エリアまで運んで降ろし、配達後に再びトラックで回収するという「CarriRo Express」構想を16年に発表している(図7)。自動運転車などの大型車(一般車)による無人配達では長距離を移動できるが、小型のロボットと比べて法規制が非常に厳しく実現が困難なため、有人トラックでロボットを運ぶという考えだ。「CarriRo Expressの考え方は今でも通用する。ラストワンマイルの配送において、今後数年で実現できるようになるだろう」(谷口氏)。

図7 荷物を載せた宅配ロボットをトラックで運搬・回収
図7 荷物を載せた宅配ロボットをトラックで運搬・回収
ZMPが構想する「CarriRo Express」のコンセプト。トラックに複数の宅配ロボットを積載し、配送先のマンションやオフィスビル、住宅街の付近まで運んで降ろしていく(a)。荷物を届け終わった宅配ロボットは再びトラックが回収し、集配拠点まで戻る(b)。ラストワンマイルの配送に適した宅配ロボットの走行距離は短いものの、集配所を多く作る土地の余裕がないため、トラックを介することで長距離配送を可能にする。(図:ZMP)
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