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あがく航空、もがく自動車メーカー

 主要業界でひずみにあえいでいるのは航空産業だ。コロナ禍による猛烈な逆風にさらされ続けている。国際線を中心に需要の低迷が続き、日本航空(JAL)とANAホールディングスは、2021年3月期に大幅な赤字を見込む。たとえコロナ禍が収束したとしても早期に復調できるか、先行きも不透明だ。

 しかし、守勢に回っているばかりではない。両社が照準を合わせるのが金融だ。JALはバンキングサービスを開始し、ANAもスマートフォン決済に触手を伸ばす。いずれもコロナ禍が猛威を振るう前から準備を進めてきたものだが、計画を中止することなく新規事業に打って出た。

 苦境にあっても両者が金融の世界に踏み込む狙いは、顧客との関係維持にある。デジタル化の進展によって金融への参入障壁は劇的に下がった。これを背景に、預金や決済といったサービスを提供することで日常的な接点を作りだそうというわけだ。嵐が過ぎ去った後、反転攻勢にでるためのカギがここにある。

 ひずみは当然、地方経済にも暗い影を落とす。地方銀行を取り巻く収益環境は厳しさを増している。新型コロナ禍による融資先の業績悪化や超低金利環境などを背景に、連結最終損益が減益や赤字に沈む地銀が目立つ。苦境にあえぐ地銀に対し、政府も経営再建を後押しする制度の整備に本腰を入れている。

 地銀の重荷になっているのが、預金や融資など銀行の根幹業務を支える「勘定系システム」だ。多くの地銀は大手ITベンダーが提供する勘定系の共同化システムを利用するが、コスト面で期待したほどの効果を生み出せていないところも多い。

 こうした状況を打破するため、クラウドなど新技術を活用した、低コストで柔軟性が高い勘定系システムを地銀向けに提供しようとする企業が出始めた。SBIホールディングスはITコンサルティングのフューチャーアーキテクトと組んで、クラウド型勘定系システムの開発に乗り出した。あがく地銀の実像も取り上げたい。

 世界に目を向ければ、新型コロナで冷え込んだ経済の復興策として、「グリーンリカバリー」(緑の復興)の機運が高まっている。大量の二酸化炭素(CO2)を排出する自動車業界は、カーボンニュートラルの実現に向けて本気で動き出さざるを得なくなった。2050年ごろにゼロエミッションを達成する目標は以前からあったが、コロナ禍を機に山場となるタイミングが一気に早まった。この急激な変化が、ひずみを生み出している。

 日産自動車の内田誠社長は「ゼロエミッションを目指しつつ利益を上げないと社会から評価されなくなる」と危機感を隠さない。電気自動車(EV)と独自ハイブリッド技術「e-POWER」の2本柱に絞って開発スピードを上げる。「全方位」の電動化戦略を掲げるトヨタ自動車が注力するテーマの1つが燃料電池車(FCV)だ。同社の担当者は「欧州勢の目が急にギラギラしてきた」とFCVへの追い風を感じ取り、システムの外販を決めた。

 自動車メーカーを追いかける部品メーカーも必死だ。ある日系部品メーカーの幹部は「2050年の環境目標は急場しのぎで設定したが中身はこれから。どこから手を付けたらいいのか」と悩みを打ち明ける。新型コロナが変えたカーボンニュートラル実現への時間軸。今後5年間の取り組みが、将来の競争力に大きな影響を与えそうだ。