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 SI事業の変革待ったなし――。システム開発を生業(なりわい)とするシステムインテグレーター(SIer)が主力としてきた受託開発ビジネスの先行きが不透明になっている。「従来型のご用聞きによるシステム開発では立ちいかなくなる」というのが業界全体の共通認識だ。そうした中、大手SIer各社はご用聞きから脱して、ユーザー企業と共に新たな製品やサービスの創出する取り組みを始めている。受託思考を取り払い、真の意味でユーザー企業のITパートナーへと脱皮できるか。SIの「ニューノーマル」を目指す専業各社の今を追う。今回はNTTデータの取り組みに迫る。

 国内最大手のシステム開発専業であるNTTデータ。近年は米Dell(デル、現デル・テクノロジーズ)のITサービス部門を2017年に買収するなど海外展開への動きが目立つが、その一方でデジタル事業の強化にも本腰を入れている。その1つが2017年7月に設立した組織「DSO(デジタル・ストラテジー・オフィス)」だ。

 DSOは顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)につながる案件の「目利き」と「育成支援」を担う組織だ。ヘッドクオーター(本社や本部)がグループ内のデジタル案件に直接投資をしてオファリング(強みとなる技術や製品サービス)を育てる取り組みを推進している。

 具体的には、グループ会社や事業部などが提案した新規事業に投資をする「ビジネスアクセラレーション(BA)」と、人工知能(AI)やサイバーセキュリティーなどの技術起点で投資をする「イノベーションアクセラレーション(IA)」という2つの施策に基づき、各事業や技術の立ち上げを財政的に支援する。同社でDSOを担当する佐々木裕常務執行役員製造ITイノベーション事業本部長兼ビジネスソリューション事業本部長は「BAは年間15件、IAは同50件程度の案件に投資をしている」と説明する。

NTTデータの佐々木裕常務執行役員製造ITイノベーション事業本部長兼ビジネスソリューション事業本部長
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NTTデータの佐々木裕常務執行役員製造ITイノベーション事業本部長兼ビジネスソリューション事業本部長
(画像提供:NTTデータ)

 デジタルの分野は市場環境や技術の変化が激しい。このためDSOは各案件における投資やリターンなどの進展だけでなく、ユーザー企業のビジネス環境や技術動向なども四半期ごとにモニタリングして年度単位で投資を判断する。佐々木氏は「3年ほどでビジネス成果に結びつけることを基本にしている」と話す。

銀行システムのクラウドサービスも

 DSOの設立から約3年半がたち、今後の成長の柱となりそうな成果も出てきてた。佐々木氏は「(成果を上げる)シナリオのパターンが見えてきた」と語る。(1)ヘッドクオーターがグローバルアセット(資産)に投資をして海外グループ会社で投資を回収するモデル、(2)顧客企業との共同研究開発で世界トップランナーになるモデル、(3)先進技術への投資によるオファリングの開発、(4)市場の転換点を見極めた投資による事業参画、という4つのモデルだ。

DSOによる投資で成果を上げた事例
(出所:NTTデータの資料を基に日経クロステック作成)
ビジネスシナリオタイプ取り組み例
本社がグローバルアセット(資産)に投資をして海外グループ会社で投資回収をするモデル各グループ会社の保険業務向けシステムをクラウド共通基盤に統合し、システムの各機能をマイクロサービス化してBPaaS(クラウド型アウトソーシングサービス)として提供
顧客企業との共同研究開発で世界トップランナーになるモデルトヨタグループと業務提携し、コネクテッドカーから集めたデータを処理するサーバーシステムを構築
先進技術への投資によるオファリングの開発ブロックチェーン技術を活用した貿易情報の連携プラットフォーム「TradeWaltz(トレードワルツ)」、セマンティック技術を活用したデータ整備・分析支援サービス「Abler(エーブラー)」
市場の転換点を見極めた投資による事業参画O-RAN(オープン仕様に基づく無線アクセスネットワーク)、5G(第5世代移動通信システム)

 例えば(1)のモデルとして、海外で展開している保険業界向けのBPaaS(クラウド型アウトソーシングサービス)事業「GIDP」がある。海外のグループ各社が個別に開発していた保険業務システムをクラウド共通基盤に統合し、各機能をマイクロサービス化することでBPaaSのサービス基盤を構築した。この取り組みにより、サービスを迅速かつ低コストで提供できるようになった。これまで北米中心に展開していた事業を、南米やEMEA(欧州、中東、アフリカ)にも拡大しているという。

海外で提供している保険業界向けのBPaaS事業「GIDP」
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海外で提供している保険業界向けのBPaaS事業「GIDP」
(出所:NTTデータ)

 DSOはこうした成功モデルを通じて得た知見を基に、デジタル案件への投資を加速させている。その中でも、将来の成長の柱と見込まれている案件の1つが「Platea Banking」と呼ぶ銀行システムのクラウドサービスだ。

 オンボーディング(登録)やペイメント、レンディング、デジタルウォレットといった銀行業務の機能を、銀行サービスのコンポーネント(ソフト部品)としてマルチクラウド環境で提供する。顧客企業はコンポーネントを組み合わせることで、素早く銀行サービスを始められる。佐々木氏は「銀行のセカンドブランドや他業界からの銀行サービス参入などアジリティーが求められる領域での活用を想定している」と話す。欧州と南米をターゲットに2020年度内にもサービスを開始する。