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 SI事業の変革待ったなし――。システム開発を生業とするシステムインテグレーター(SIer)が主力としてきた受託開発ビジネスの先行きが不透明になっている。「従来型のご用聞きによるシステム開発では立ちいかなくなる」というのが業界全体の共通認識だ。そうした中、大手SIer各社はご用聞きから脱して、ユーザー企業と共に新たな製品やサービスの創出する取り組みを始めている。受託思考を取り払い、真の意味でユーザー企業のITパートナーへと脱皮できるか。SIの「ニューノーマル」を目指す専業各社の今を追う。今回は日鉄ソリューションズ(NSSOL)の取り組みに迫る。

 「我々の目標は従来のシステムインテグレーター(SIer)から『Xインテグレーター』へと変革することだ」。日本製鉄の子会社で、製造業や金融、流通、公共など幅広い分野のシステム開発を手掛ける日鉄ソリューションズ(NSSOL)。同社の齋藤聡執行役員DX推進&ソリューション企画・コンサルティングセンター(DXIC)所長はこう語る。

日鉄ソリューションズの齋藤聡執行役員DX推進&ソリューション企画・コンサルティングセンター(DXIC)所長
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日鉄ソリューションズの齋藤聡執行役員DX推進&ソリューション企画・コンサルティングセンター(DXIC)所長
(写真提供:日鉄ソリューションズ)

 「X」は変数で、システムだけではなく業務プロセスや組織も含まれる。さらに、Xには大きな変革に取り組む意気込みとしてトランスフォーメーション(X-formation)の意味も込めた。「業務プロセスや組織の変革に踏み込んだDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することで、顧客企業のファーストDXパートナーになることを目指す」(齋藤所長)。

 こうした変革に向けて1年前の2020年4月に設立したのがDXICだ。同社におけるCoE(センター・オブ・エクセレンス)の役割を担う組織として、社内のDX人材を集約した。近年、金融機関がMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の分野に取り組んだり、製造・流通業が金融サービスに参入するなど、ユーザー企業の業種・業態の垣根が低くなりつつある。従来の事業部単位での縦割りの組織では、こうした動きに対応できないと判断。顧客のDX支援に取り組む横串の組織として設立した。

 DXICは、DXの戦略や計画策定を担当する「ITコンサルティンググループ」と「イノベーション共創&組織変革グループ」、AIやデータの活用を担当する「AIソリューショングループ」と「データ活用グループ」、経営や事業、業務の俊敏性(ビジネスアジリティー)を促進するシステムを担当する「アーキテクチャグループ」、サービスデザインやユーザーエクスペリエンス(UX)、アジャイル開発を担当する「BXDC」という6つのグループからなる。

 各グループに課されたミッションは、顧客企業のビジネスや組織変革をデジタル/データ駆動で支援することだ。それぞれの専門知識をもとに、NSSOL社内の各事業部などと連携してDX推進に取り組む。

 DXICのメンバーは既存案件の実行を支援するだけでなく、顧客との接点作りも担っている。従来のシステム開発では一般的に、顧客企業の情報システム部門とのやりとりが中心になる。しかしDXを進める場合は、顧客企業の経営層やビジネスユニットとの深い対話が求められるケースが少なくない。このようなときに、DXICのメンバーが事業部の担当者に同行する。専門知識に基づく視点で対話をして顧客との接点を増やし、新事業を創出するきっかけへとつなげる狙いだ。

製造業の専門部隊を設け人員を1.5倍超に

 NSSOLはこうした取り組みを加速するべく、2021年4月1日付でDXICを再編・拡充する。組織名を「DX&イノベーションセンター(略称は同じくDXIC)」と改称し、既存の6グループを「ビジネスイノベーション&コンサルティング部」「アーキテクチャ&コンサルティング部」「データテクノロジ&コンサルティング部」「サービスデザイン部」の4つに再編。それに加えて、製造業向けの専門部隊「デジタル製造業センター(MDXC)」を設ける。さらに、2020年度に80人だったDXICの人員を、2021年度には120~130人まで増やすことも計画している。

DX推進組織を強化へ
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DX推進組織を強化へ
(出所:日鉄ソリューションズの資料を基に日経クロステック作成)

 MDXCは製造業のDX案件でマーケティングやソリューション企画、上流コンサル、提案・実行支援をする部隊だ。日本製鉄の案件などで培ってきた人材や知見をもとに、製造業向けDXビジネスのCoEとしての機能を担う。齋藤所長は「当社は日本製鉄に対して数十人規模でIT人材を出向させているし、一部では逆のパターンもある。このような活動で培った強みを生かして製造業の変革に寄与する」と意気込む。