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 SI事業の変革待ったなし――。システム開発を生業とするシステムインテグレーター(SIer)が主力としてきた受託開発ビジネスの先行きが不透明になっている。「従来型のご用聞きによるシステム開発では立ちいかなくなる」というのが業界全体の共通認識だ。そうした中、大手SIer各社はご用聞きから脱して、ユーザー企業と共に新たな製品やサービスを創出する取り組みを進めている。受託思考を取り払い、真の意味でユーザー企業のITパートナーへと脱皮できるか。SIの「ニューノーマル」を目指す専業各社の今を追う。今回は日本ユニシスの取り組みを解説する。

 「従来型のシステムインテグレーション(SI)のビジネスはいずれなくなるかもしれない。強い危機感を持って2016年ごろから変革に取り組んでいる」。日本ユニシスの葛谷幸司取締役専務執行役員はこう語る。

日本ユニシスの葛谷幸司取締役専務執行役員
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日本ユニシスの葛谷幸司取締役専務執行役員
(写真:陶山 勉)

 同社は銀行の勘定系システムをはじめ、電力会社や食品スーパー、航空会社の基幹システムなど、幅広い業種向けにSI事業を展開している。SI事業の足元の業績は堅調に推移しているが、SoR(システム・オブ・レコード)の領域でのモダナイゼーションの需要が一巡する2027年以降は不透明感が強い。

 同社を含めた日本の大手SIerは、SoR領域についてこれまで蓄積してきたノウハウを持つが、今後の成長分野とされる顧客接点系のSoE(システム・オブ・エンゲージメント)の領域は、国内のネット系企業やGAFAなどの後じんを拝している状況だ。

SI人員の移行分を外部委託で補う

 こうした危機感から、日本ユニシスが前期までの中期経営計画(2018~2020年度)で取り組んだのが、非・人月型ビジネスへの人員のシフトだ。SI事業に従事するエンジニアのうち約3割をプラットフォーム型やサービス型といった人月型ではないビジネスに移しつつ、人工知能(AI)やデータ分析、UX(ユーザーエクスペリエンス)/UI(ユーザーインターフェース)、アジャイル開発といった新たなエンジニアリング技術の教育を進めた。

日本ユニシスが取り組んだ非・人月型ビジネスへの人員シフト
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日本ユニシスが取り組んだ非・人月型ビジネスへの人員シフト

 ただし人員を3割減らしても、底堅い需要が続く従来のSI事業はおろそかにできない。受注したビジネスを残りの7割の人員で回せるよう、外部への委託を増やした。自社のコアコンピタンスに関わる部分は内製を強化する一方で、それ以外の領域は国内のパートナー企業や国内外のグループ会社、中国企業へのオフショア開発を活用することにした。

 ただし、外部委託を増やすといっても取引先の数を増やしたわけではない。むしろ、国内のSI系パートナーは減らす方向でパートナー制度を見直した。取引先の数が多ければ、プロジェクトの進捗や開発リソース、成果物の品質などの管理コストも大きくなるからだ。取り組みを始めた2018年からの3年間で、SI系パートナーを当初の半分から3分の1程度の約50社まで絞り込んだ。

 葛谷専務執行役員は「(パートナー制度の見直しは)古くから付き合いがあるといった理由で、手つかずの状態だった」と打ち明ける。しかし、業界の多重下請け構造などの課題が取り沙汰されている今、避けては通れないと判断。パートナー各社の技術リソースや品質、過去の発注量、売り上げに占める日本ユニシスとの取引額の割合などを基に、取引を続ける会社を選定した。各社の経営陣に業界全体の変革が迫っていることを包み隠さず話し、制度見直しの理解を求めたという。

 葛谷専務執行役員は「『一緒に変わりましょう』と話して納得いただいた」と語る。人月ビジネスからの脱却を目指すパートナーには、社内向けの先端ITのeラーニングを無償で提供するなど、変革を支援する取り組みも進めている。

 オフショア開発は、取引先を中国の大手SIerである東軟(ニューソフト)グループなど2社に絞って拡大した。東軟グループなどの中国大手SIerは圧倒的な動員力を持つ。自社で大きな人員を抱え、外部ベンダーに開発を再委託しないSIerを選ぶことでガバナンスを利かせた。

 このようにSI系の外注先の数を減らす一方で、AIやデータ分析、UX/UIといった先端IT系のパートナーは30社近くまで増やした。さらに社内でもDX推進ビジネスを強化するべく、2018年4月にグループ全体の技術部門を再編して「BizDevOps部門」と呼ぶ組織を設けた。SI事業の3割の人員の移動先の1つで、業種業態を問わないプラットフォーム/サービス型ビジネスの開発を担う。