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 今回から本連載は具体的なクラウドデータベースサービスについて解説していきます。第4回は企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていく上で、データ基盤として米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)の「Amazon Aurora」を採用するメリットとデメリットを解説します。

 Amazon AuroraはPostgreSQL、MySQLとの互換性を保ちつつ、AWSが独自機能を追加したデータベースサービスです。クラウドに適した改修を施すことで、性能、セキュリティー、可用性などが強化され、他のサービスとの連係によって利便性も高められています。

 なお、Amazon Auroraという名称はPostgreSQL、MySQLとの互換性を持つ2つのデータベースサービスの総称であり、正式名称はそれぞれ「Amazon Aurora with PostgreSQL compatibility」「Amazon Aurora with MySQL compatibility」です。本記事ではAurora PostgreSQL、Aurora MySQLと記載します。総称で表記する場合はAmazon Auroraもしくは単にAuroraと記載します。

 現在、既存のオンプレミス環境からクラウドへ移行したいというユーザー企業からの依頼が急激に増えてきています。特にAWSへの移行において、データベースの選択肢はAmazon Auroraを最優先に検討し、それが難しければ他の選択肢を検討するというユーザーが多くいる印象です。

 以下ではクラウドならではの拡張性や可用性、リージョンレベルの耐障害性といった一般的なデータベース的視点ではなく、DXを促進する上でAmazon Auroraにどのような優位性があるかに焦点を当てて解説します。

DXは長期的戦略で考える

 DXを推進する上で重要なポイントは、長期的戦略に立ってシステム全体を考えることです。変化が大きく新しい機能を利用する可能性が高いと考えられるDXのシステムには、新たな技術の導入を続けるデータベースを利用するのが得策です。

 AWSの発表によれば、2019年に、Amazon Relational Database Service(RDS)とAuroraのデータベースエンジン全体で100を超える機能がリリースされています。そのうちAuroraの機能リリースは60を超えています。具体的には、グローバルデータベースといったデータベースの機能拡張、AWS上の機械学習系サービスとの連係機能、バックアップサービスでの管理が可能となることなどによるシステム開発の生産性向上、運用の効率化、データベースの可用性向上といった恩恵を受けられます。

Auroraの進化は予想できない
Auroraの進化は予想できない
アップデートを繰り返すクラウドDBサービスの概要
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 1年間で60のリリースということは、5年後にはAuroraデータベースで300を超える機能リリースの可能性があるということです。5年後のAuroraがどんな機能を備えているのかを現時点で想像するのは難しいことですが、DXの長期的戦略を考える際にはこの進化の速度を考慮に入れておくべきです。

 現状では、会社全体に散らばっているデータを集めたとしても、それを有効に活用できないかもしれません。しかし今後、AWS上における機械学習サービスが進化を続け、より使いやすくなり、高度なデータ分析やAI(人工知能)の利用が「安く」 かつ「簡単に」できる時代がやってくると予想されます。

 既にDXの先進的な企業は、社内全てのデータをクラウド上に構築したデータレイクに集約し、アドホックにデータを分析し、様々なプロダクトを同時並行に進め、日々新しいことに挑戦しています。業務効率化も重要ですが、このような挑戦により新たに生まれるサービスを数年後の事業の柱とすることで、企業が進化し続けていくことがDXの求める真の姿です。

 そのために、まずやるべきことはデータを活用するための土台を整えることです。特に主要クラウドであるAWS上にシステムを構築する場合、データベースサービスにAmazon Auroraを選択することは、データレイクや他のサービスとの相互運用性を高められる有力なDX対策の1つです。