全3745文字

 数あるVR(仮想現実)技術の中でも手軽に挑戦できる技術として注目しておきたい「フォトグラメトリー」。簡易な3Dモデルであれば所有するパソコンやデジタルカメラで試せるのが利点だ。本連載では、VR事業などを手掛けるPsychic VR Labの一岡洋佑氏が、フォトグラメトリーを使った3Dモデル作成のノウハウを解説する。今回のテーマは「3Dモデル作成対象を撮影する際の注意点」だ。(日経クロステック)

 フォトグラメトリー用機材の準備が整ったら、3Dモデルを作成する対象物の撮影に進もう。まずは撮影対象の選定ポイントを説明しよう。

 フォトグラメトリーで3Dモデルを作成する場合、対象物として向いているものと向いていないものとを見極めることが重要だ。適切な対象を選んで撮影環境を整えることが、フォトグラメトリーを成功させる最初のステップとなる。

 3Dモデルを作成しやすい対象物とはなにか――。本連載では、部屋の一部を3Dモデルとして作成することを目標に掲げたことから、室内での環境を前提に解説する。建物の外観や小さな物体などを3Dモデルの撮影対象とする場合も、基本的な注意点は同じなので参考にしてほしい。

極端にすっきりとした部屋はNG

 初めてフォトグラメトリーに挑戦するのであれば、室内はある程度整理されているほうがよい。本、食器、観葉植物といった小物類が乱雑に置かれ、ごちゃごちゃとしている部屋は避けたい。また、こまごまとした意匠のインテリアが置かれていたり、家具の配置が入り組んでいたりする場合も、3Dモデルが破綻する可能性が高くなる。できる限りすっきりとした部屋のほうが撮影に向いている。

 だからといって、置いてある物を全て片付けたり、壁や天井などの造形がシンプル過ぎる部屋を選んだりするのはやめよう。フォトグラメトリーで3Dモデルを作成する場合、写真から対象物の特徴点を抽出して空間座標を計算するのが基本的な仕組みだ。このため、特徴点が抽出しにくい部屋だと正確な空間座標を算出できず、3Dモデルが破綻してしまうというのが理由だ。例えば、会議室のように壁一面が真っ白で何もない部屋は、フォトグラメトリーが苦手とする対象に当たる。ほどよく室内に物が置いてあったり、特徴的な意匠の壁があったりするような部屋がよい。

 今回は畳や障子などに特徴が出やすい和室を撮影対象に選んだ。なおこの部屋の壁は左官仕上げで模様などの特徴が少ないため、3Dモデルを構築する際に破綻する心配があった。そこで、正面右側の壁にあえて特徴点をつくるように、A3サイズのポスターを貼ったり、右隅に小さな棚を置いたりして対処した。

3Dモデルを作成する対象として選んだ和室。この部屋の壁は左官仕上げで模様などの特徴が少ないため、A3サイズのポスターを貼ったり、右隅に小さな棚を置いたりした(撮影:日経クロステック)
3Dモデルを作成する対象として選んだ和室。この部屋の壁は左官仕上げで模様などの特徴が少ないため、A3サイズのポスターを貼ったり、右隅に小さな棚を置いたりした(撮影:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

大の苦手はガラスや鏡

 ガラスなどの透明な物体や、鏡などの反射する物、表面が単色で模様がない物などはフォトグラメトリーにとって特に苦手な対象物だ。写真を解析して空間座標を算出する際に妨げとなりやすい。室内にある物で例を挙げれば、表面の光沢が強い家具や、鏡面仕上げの冷蔵庫、表面が反射したり黒潰れしたりするテレビなどが考えられる。

3Dモデルが破綻した例を動画で確認。テレビを置いた部屋の一角をフォトグラメトリーで3D化した。テレビの画面が黒いため3Dモデルが破綻して穴が開いたような状態になっている。動画はイタリア・3Dflow社のソフト「3DF Zephyr Free」で作成した(出所:日経クロステック)