数あるVR(仮想現実)技術の中でも手軽に挑戦できる技術として注目しておきたい「フォトグラメトリー」。簡易な3Dモデルであれば所有するパソコンやデジタルカメラで試せるのが利点だ。本連載では、VR事業などを手掛けるPsychic VR Labの一岡洋佑氏が、フォトグラメトリーを使った3Dモデル作成のノウハウを解説する。今回のテーマは「ソフトを使った3Dモデル作成のコツ」だ。(日経クロステック)
フォトグラメトリーのための写真撮影が終了し、画像データの用意ができたら、いよいよフォトグラメトリーソフトでの3Dモデル生成に取り掛かろう。本連載ではフォトグラメトリーの入門に適したソフトとして、「3DF Zephyr」(イタリア・3Dflow社)の無料版を使用して説明する。読み込み可能な画像データの上限が50枚であることなど、有料版と比べると機能に制限があるものの、試しに始める際の選択肢としてはお薦めだ。気軽に挑戦してほしい。
フォトグラメトリー用のソフトは他にもさまざまな製品があるが、基本的な考え方は同じだ。3Dモデルの生成は主に次のような手順で行う。最初にプロジェクトを作成して写真を読み込む。次に写真のアライメントを実行。その後、境界を設定して、点群データを作成する。作成した点群データからさらに3Dモデルを生成。最後に、テクスチャー付きのメッシュデータを作成する。
ここからはそれぞれの工程について1つずつ解説していこう。
厳選の50枚で位置や方向を解析
3DF Zepherを起動したら、最初に「新規プロジェクトの作成」を行う。「プロジェクト」は、3Dモデルを生成するオブジェクトごとに作成する。ツールバーの「新規プロジェクトの作成」ボタンをクリックすると設定画面が開くので、設定項目はデフォルトのままで「次へ」のボタンをクリックしよう。
次に写真の選択画面が開くので、3Dモデルを生成するために撮影した写真を選択して画像データを取り込む。なお、3DF Zephyrの無料版は画像データの取り込み上限が50枚だ。50枚を超える画像データを使って精密な3Dモデルを生成したい場合は、有料版を購入しよう。
画像データを取り込んだら「次へ」ボタンと「実行」ボタンをクリック。プロジェクトの作成と写真の取り込みが完了する。次に「写真のアライメント」の工程に進む。同ソフトでは画像データを取り込むと自動的に作業が始まる。
写真のアライメントは、画像データに対して撮影した位置や方向を解析する工程だ。写真の1枚1枚について、空間上のどの地点から撮影されたものかを解析し、デジタルの空間上に並べていく。
しばらく待つと、写真のアライメント工程が完了し、アライメントの成否が「YES/NO」の表記で一覧表示される。写真の一覧の横に「NO」と表記されている写真はカメラ位置や方向の解析に失敗したもので、使用できない状態を示している。
この時点でアライメントに失敗し「NO」と表示されている写真が多い場合、以降の工程でデータが不足し3Dモデルの生成がうまくいかない可能性が高い。このような場合は、不足部分の追加撮影を行うか、全体の撮影をやり直すことも覚悟しよう。
アライメントで失敗する原因の多くは、隣り合う写真のオーバーラップ(重なり)が十分でないことが関係している。特に撮影する写真の枚数が少ないと、オーバーラップが不十分になりがちだ。写真を撮影する際は写真のオーバーラップが60%以上になることを意識しよう。
追加撮影は家具の配置や照明など撮影環境が変化していない場合のみ有効だ。撮影環境が変化してしまっている場合は、残念ながら画像データの追加は難しい。最初から撮影し直そう。
ソフトの作業に慣れてくれば、写真データを読み込んで解析した後、点群データを作成し、粗い3Dモデルを確認しながら欠損している部分を見つけ出すといったこともできるようになる。欠損している部分について写真を追加で撮影し、画像データを再度プロジェクトに読み込んでアライメント工程からやり直してみよう。写真を追加撮影する場合は、撮影済みの写真とオーバーラップするように意識して撮影するとよい。