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 米Apple(アップル)が電気自動車(EV)に参入する観測が高まっている。iPhoneで世界を席巻したAppleならどんなクルマを造り、どう売っていくか。Apple米国本社マーケティング担当バイス・プレジデント(副社長)兼日本法人代表取締役を務めた前刀禎明氏に読み解いてもらった。(聞き手は清水 孝輔=日本経済新聞社企業報道部)

前刀禎明氏
前刀禎明氏
(写真:日本経済新聞社)
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アップルカーに関する報道を聞いて驚きましたか。

 驚きはしなかった。米4大IT企業のGAFAはどれだけ人々の生活の一部になるのか、という競争をしている。米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)は物流を押さえるのに加えて、米食品スーパーのWhole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)を買収して食の分野にも進出した。Appleが本社を置く米西海岸では車は生活の一部だ。車を造るのはすごく自然な流れだ。

AppleがEVに参入するなら何を目指すでしょうか。

 アップルカーはライフスタイルを売ることになると思う。モビリティーによってどこでもAppleのある体験ができるという状態が実現できる。スマートフォンから腕時計型端末のApple Watch、移動空間までシームレスにつながってほしい。例えば、移動中にApple Watchで健康データを取得し、異常に対応して命を守ることもあり得るだろう。

 売り方としてもスマホはスマホ、車は車と分けない方がよい。車に設置するCPU(中央演算処理装置)ですべてコントロールしようとすると、5年後にはアップデートに対応できず型落ちになって使い物にならなくなる恐れがある。車の頭脳の部分は車に備え付けず、高性能なスマホを使えば済む可能性がある。