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 自動車産業でソフトウエアの重要性が高まっている。自動車への参入がささやかれる米Apple(アップル)が得意とする領域だ。名古屋大学未来社会創造機構で客員准教授の野辺継男氏に、自動車産業で高まるソフトの影響などを聞いた。(聞き手は押切 智義=日本経済新聞社企業報道部)

野辺継男氏
野辺継男氏
(写真:日本経済新聞社)
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AppleなどIT企業が車に新たに提供できる価値をどう見ていますか。

 まさに今、車の付加価値がクラウドの上でつくられる時代に入っている。例えば、走っている状態からデータを集めて、エネルギー効率を高めるため「こういう走り方ならこれ」とソフトをダウンロードするような仕組みも現実味を帯びてきた。車をより良くする要素がクラウド上に移行すれば、それはハイテクカンパニーに強みをもたらす。

Appleの強みはどういうものが想定されますか。

 ソフトの開発能力が高いことである。象徴的なのが無線通信経由でソフトをアップデートして機能を高めるOTA(Over The Air)だ。AppleはすでにiOSで、OTAを経験済み。ソフト開発はOSに至るまで何層ものソフトが重なる構造である。Appleには複雑な構造のソフトをバージョン管理しながらアップデートしてきた知見がある。

 電気自動車(EV)はOTAとの相性が良く、航続距離を延長したり、事故を防いだりとアップデートの対象範囲が走行まで広がる。現状は自動車メーカーでは米Tesla(テスラ)くらいしか本格的なOTAを実現できていない。OTAができないと、EVは競争力を失う。