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 米Apple(アップル)が電気自動車(EV)の開発を模索する。自動運転時代の新しい競争を見据えた「Google vs トヨタ」と題した書籍を2014年にいち早く出版し、テック企業に詳しいナビゲータープラットフォーム取締役で証券アナリストの泉田良輔氏にApple参入の狙いや影響を聞いた。(聞き手は清水 直茂=日経クロステック)

泉田良輔氏
泉田良輔氏
(本人提供)
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なぜAppleがEVに参入するのでしょうか。

 他に大きな市場がない。売上高が30兆円に達するAppleのような巨大な企業になると、テレビ市場では物足りない。成長に必要な大きな市場がどこにあるのか。消去法で自動車と考えたのではないか。

 ユーザーの時間の使い方という観点で、自動車はスマートフォンと補完関係にあることも見逃せない。車の運転中にiPhoneを操作できないので、iPhoneとはユーザーの時間の奪い合いが生じない。もちろん、自分たちの技術を生かせる余地もある。ならば自動車市場への参入を考えてみようか、となったのでは。

 手元資金の使い道の一環でもある。現状がもうかりすぎて、手元資金がじゃぶじゃぶだ。投資家から見ると、どこかに投資しないのであれば配当を増やすか、自社株買いしろとの圧力をかけざるを得ない。ただAppleとしては、投資家に全て還元するよりは、自分たちで何か新しいことをやりたいと考えたのだろう。

米Tesla(テスラ)が影響を与えたとの見方があります。

 Teslaの影響は大きい。あと注目しているのは、中国の上海蔚来汽車(NIO)だ。TeslaやNIOに対して思うのは、自動車にSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)のビジネスが本格的に始まりそうなことである。例えばEVを使った分だけ対価を支払うといったイメージだ。

 Appleは、SaaSのビジネスに出遅れた。音楽配信や映画配信などでスウェーデンSpotify Technology(スポティファイ・テクノロジー)や米Netflix(ネットフリックス)などに先行を許した。自分たちにもできたのにと、絶対に思っているはずだ。車にSaaSの潮流がやってくるのであれば、自分たちも乗らざるを得ないと考えたのではないか。