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 米Apple(アップル)が電気自動車(EV)の開発を模索する。同社の躍進を支えたのが優れたユーザーインターフェース(UI)である。マルチタッチなど革新的なUIでiPhoneなどの利便性を向上させてきた。UI研究の泰斗で、Appleの強みを知る東京大学大学院教授でソニーコンピュータサイエンス研究所副所長の暦本純一氏に、その強さの秘密とアップルカーへの期待を聞いた。(聞き手は清水 直茂=日経クロステック)

暦本純一氏
暦本純一氏
(本人提供)
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Appleの強さはどこにありますか。

 ゼロから自分で作れるところだ。ソフトウエアとハードウエア、そしてシリコン(半導体)の設計について自ら完全にコントロールできる。資金力もあり、製品に対して技術や価格、デザインなどに妥協しないで作れる点が、Appleの最大の強さではないか。

 日本企業で、すごいスマートフォンのアイデアを思いついたとする。ただしOSや半導体を自分で設計できない。するとアライアンスなどを考える必要があり、どこかで妥協が要る。

 Appleの強みは、ユーザビリティーの根源的なところを改良できる企業でもあるところ。携帯電話やモバイルコンピューティングといったものがあった時代に、スマートフォンという概念を生み出した。

AppleといえばUIが革新的で優れる印象があります。

 Appleがマルチタッチなどをしっかり取り入れたことは画期的だが、UIは全体のバランスで、先端的だから良いというものではない。

 UIについてはベンチャーが実験して、Appleは良いアイデアを吸い上げるところかもしれない。例えばiPodは優れたUIの製品だが、その基となるアイデアは小さな会社のものだ。

 今なら折り畳みスマホの韓国Samsung Electronics(サムスン電子)などのほうがUIとしては先端だろう。Appleも数年後に折り畳みスマホを発売すると思う。Apple自身は先端というよりも、じっくり見た後、一気に奪いにいく印象だ。超大企業であり「レイトカマー(遅刻者)」でも十分に追いつける。