全2760文字
PR

 米Apple(アップル)を筆頭に、ソニーや中国のIT勢など、自動車業界に新しいプレーヤーが続々と参入してきそうだ。こうした変化を部品メーカーはどう捉えているか。ドイツのメガサプライヤーであるBosch(ボッシュ)の日本法人で社長を務めるKlaus Meder(クラウス・メーダー)氏に話を聞いた。(聞き手は久米 秀尚=日経クロステック/日経Automotive、岡田 江美=日本経済新聞社企業報道部)

ボッシュ日本法人社長のKlaus Meder氏
ボッシュ日本法人社長のKlaus Meder氏
(写真:ボッシュ)
[画像のクリックで拡大表示]

Appleをはじめ、自動車業界への新規参入が加速する現状をどう捉えていますか。

 個別企業の話はできないので一般論になるが、新規参入によって自動車業界の魅力が増していくのは喜ばしいことだ。10年前、我々は古い産業と言われていた。自動運転や電動化など新技術の開発スピードが上がっていることが、自動車産業の魅力を高めているのだと思う。

 新規に参入してくる企業のモチベーションは様々。画期的なパワートレーン技術を持っていたり、独自のセンサーを使って新しいUI(ユーザーインターフェース)を実現しようとしていたり。IT業界からは、エンターテインメントや広告などをクルマという舞台で展開したいと考える企業もいるだろう。

Boschの新規参入者との付き合い方は。

 それぞれの新規参入者は、既存の自動車メーカーなどとの差異化を図ることを最重要事項として取り組んでいる。ただ、クルマという形にするには、駆動系やブレーキなどの制御系、シートをはじめとする内装部品も必要だ。自らが得意とする領域に集中できるように、Boschのような部品やシステム、サービスを提供できるベンダーの存在が重要だと考えている。場合によっては、共同開発を進めていく。

 極端な例としては、Boschはドライビングシャシー全体を提供することも可能だ。「Rolling Chassis(ローリングシャシー)」と名付けたEVプラットフォームがそれ。企業によっては走行性能よりもデザインに重心を置きたい。こうした企業には、ターンキーのプロジェクトが喜ばれる。クルマ開発のほとんどをサプライヤーが手掛けるもので、Boschは既に多くの経験を有している。新規参入の増加は、当社にとっても存在感を高める大きなチャンスなのだ。

ローリングシャシーを使えば、Bosch自らが自動車メーカーになることもできそうです。

 我々は自動車メーカーにはならない。ローリングシャシーの上にアッパーボディーを載せればクルマができるように思われるが、自ら車両を造るつもりはない。

 ローリングシャシーには、駆動系や操舵系、制動系など多くの部品やシステムを搭載している。これらを連携させる部分の開発には長い時間がかかる。当社のシャシーを使ってもらうことで、開発期間を大幅に短縮できるはずだ。

 特に新規参入系は価値を見出してくれるだろう。クルマは多くの部品が複雑につながる。それらを高い信頼性で実現するのは容易ではない。こうした開発の「痛み」を軽減できるのが、当社が提供する価値の1つだと思う。