エンジン部品のピストンリングを主力とするリケンは、電動化が加速する中、エンジン関連部品で効率化を進めつつ、新たな収益の柱の構築を急いでいる。米Apple(アップル)のEV参入観測が浮上するなど、エンジンを取り巻く環境が厳しさを増す。どう勝ち残るのか。社長兼最高執行責任者(COO)の前川泰則氏に聞いた。(聞き手は岡田 江美=日本経済新聞社企業報道部、久米 秀尚=日経クロステック/日経Automotive)
Appleをはじめ、自動車業界への新規参入が加速する現状をどう捉えていますか。
まずこれまでの車の進化を振り返ると、キーテクノロジーは全地球測位システム(GPS)、自動的に地図に渋滞状況が反映されるような通信技術、周辺の車を検知するセンサーなどになるだろう。最近このような分野での付加価値が車でも上がっているが、まさにそれらは携帯、スマートフォンに関連する企業がやってきた世界だ。なぜAppleが自動車に参入するのかと思うかもしれないが、自動車の進化の方向性とAppleなどが手掛ける方向は実に同じである。
自動運転などが進めば車は自ら動くのではなく、車がロボットのように外部と連携しながら移動するだろう。自分で運転する側面もあるとはいえ、いってみれば他の人に動かされている「他動車」になっていくのではないか。そうであれば劇的な変化だ。ただ、その中でも安全性は重要だ。AppleなどIT企業の新規参入があってもすべてを自動でというのはすぐには難しい。経済合理性と安全性のせめぎ合いとなるだろう。
新規参入が加速する中、エンジンなど内燃機関のピークアウトはいつごろと見ますか。
新型コロナウイルスの影響が出る以前は2030年代中ごろと見ていた。しかし、それよりも早くなり、地域ごとに差はあるものの全体感としては30年を基準にプラスマイナス2年くらいの間でピークアウトが来てしまうかもしれない。自動車メーカーとやり取りする中でも新しい内燃機関の開発プロジェクトを凍結する事例もある。ただピークアウトしたからといってゼロになるわけではなく、我々は勝ち残っていく。