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 クルマの価値がハードウエアからソフトウエアに移りつつある自動車業界。その象徴が米Apple(アップル)やソニー、中国のIT大手などの新規参入だろう。新規勢を含め多くの企業が次世代車両の中核に据えるのが高性能な車載コンピューターで、その有力サプライヤーが米NVIDIA(エヌビディア)だ。同社で自動車部門を率いるシニアディレクターのDanny Shapiro(ダニー・シャピーロ)氏に、潮目の変化をどう捉えているか聞いた。(聞き手は久米 秀尚=日経クロステック/日経Automotive、星 正道=日本経済新聞社、岡田 江美=日本経済新聞社)

NVIDIAのDanny Shapiro氏
NVIDIAのDanny Shapiro氏
同社Senior Director of Automotiveとして、自動運転車に向けたAI(人工知能)開発などを主導する。(写真:NVIDIA)
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「アップルカー」の登場について、サプライヤーという立場から見てどのようなチャンスがあるのでしょうか。

 Appleについては、いろいろな噂が何年にもわたって存在する。何を考えているか、具体的な計画は知らない。ただ一般論として、NVIDIAや自動車メーカーが「将来的に必要だ」と言ってきた技術が実用化の段階に入ろうとしていることの表れなのだろう。

 我々はAI(人工知能)を搭載したスーパーコンピューターが必要だと言ってきた。クルマが「車輪が付いたデータセンター」になるのだ。自動運転を可能にするには、これまでにない速度のデータ処理が必要。従来型の半導体メーカーや自動車部品メーカーがノウハウを持っていない領域だが、当社にはHPC(高性能コンピューティング)やGPU(画像処理半導体)、スパコンなどの知見や経験がある。

とはいえ、クルマのハードウエアはコモディティー化の方向です。

 当社は、世界で1番難しい問題に対する解を提供したい。サプライヤーとしても、コモディティー製品を提供する形にはならない。ゲーミングやプロフェッショナルグラフィックスなどに向けたGPUもそうだった。車載市場にはインフォテインメント機器の領域から参入した。民生で培った技術を活用しやすかったから。採用は欧州勢から始まり、米Tesla(テスラ)とも共同開発してきた。

 だが、そこにとどまることはせず、車載AIの領域に踏み込んだ。自動運転に関しても運転支援システムである「レベル2」だけでなく、自動運転の「レベル4/5」まで実現できる実力がついてきた。それでも、自動車自体がコモディティー化していくのは、まだ先だと思っている。インフォテインメント機器を進化させるのもAIだ。音声アシスタントや乗員の状態検知など、AIを使えばクルマの安全性や利便性を向上させるための差別化が可能になる。

最近の取り組みでは、上海蔚来汽車(NIO)など新興の電気自動車(EV)メーカーとの提携が目立ちます。既存の自動車メーカーとの違いは何か感じていますか。

 見方としては、既存プレーヤーと新規勢の違いというより、どういった電気/電子(E/E)アーキテクチャーを志向しているかがポイントだ。中央集中型の車載コンピューターを搭載したアーキテクチャーを思い描いているかどうか。

 既存の自動車メーカーだろうが新興EVメーカーだろうが、ソフトウエアを重視した未来志向な企業は中央集中型のE/Eアーキテクチャーの方向にシフトしている。ソフトの更新によって車両の機能を追加・改善していく車両の投入に向けて、各社は開発を急いでいる。