2020年度(令和2年度)の技術士第二次試験の筆記試験では、出題形式に若干の変更が見られました。とはいえ、出題テーマは想定内のもので、求められる知識や能力のほとんどは、以前から技術士に求められてきたものです。本書は受験対策で欠かせない情報を毎年、提供してきました。これまでのノウハウを駆使し、改めて受験者のためのバイブルとして、21年度の試験に合格するためのポイントや勉強方法などをお伝えしたいと考えています。
皆さんの周りにはたくさんの先輩技術士や受験経験者がいるかもしれません。しかし、出題される内容やテーマ、対策の方法は試験の傾向とともに変わる部分も多いことから、先輩方の情報は参考にならないケースも考えられます。なおさら、本書の使命感を感じます。これまで多くの受験指導をしてきた私たちだからこそ、受講生からの生きたフィードバックも盛り込むことができます。より実践的なアドバイスを提供している点も本書の特徴です。
技術士第二次試験では、論文形式の筆記試験で専門知識や応用能力、問題解決能力および課題遂行能力について確かめた後、合格者に対して面接形式の口頭試験を実施し、技術士としてふさわしいかどうかを判定します。
多くの受験者は実務経験を7年(受験資格によっては4年)以上積み、技術士にふさわしい業務を日ごろから行っていますので、合格に値する能力は持っています。例えば、選択科目の「道路」で受験するのに、「道路構造令」について知らない技術者はいないでしょう。しかし、試験に合格するには日常の業務を論文形式で表現でき、面接で伝えることができなければなりません。つまり、ノウハウが存在します。
これらを考慮して、本書では筆記試験での表現方法や口頭試験での解答方法のノウハウを紹介しています。さらに、短期間で効率良く合格レベルの論文が作成でき、口頭試験で適切な解答ができるように工夫してあります。
特に、筆記試験への対策方法を示した第3章と第4章では、建設部門に共通するテーマや全11科目ごとの出題テーマを予測し、それらに対する解答のポイントを充実させました。これだけで論文対策ができてしまうくらいに仕上げています。きっと皆さんの勉強に大きく役立つ部分だと確信しています。
さらに、口頭試験で重視される実務経験証明書の記述内容も試験の一部と考えられます。この書き方や解答のポイントについても解説します。
第1章で、20年度試験での変更点とともに、出題傾向や勉強方法などについて概説しています。第2章では口頭試験の出題内容を見据えた実務経験証明書の記入方法や注意点について、良い例と悪い例とを比べながら紹介しています。さらに、経歴の記述でよく寄せられる質問を、回答と併せて整理しました。
第3章には筆記試験のうち、必須科目の出題傾向の分析や対策方法に加え、予想問題と論文例を掲載しています。重要なテーマやキーワードを押さえてください。幸い、建設部門に共通するテーマは限られますので、やみくもに勉強するのではなく、この章で示している範囲を中心に勉強してください。
第4章は、選択科目に関する論文の書き方です。「専門知識と応用能力」「問題解決能力および課題遂行能力」を問う論文に対して、想定した出題テーマを基にそれぞれ論文の構成や記述すべき内容について解説しています。表0.1の選択科目のうち、受験者の多い8科目を対象に論文例(解答例)も掲載しました。この4章には、過去7年間の出題内容を分析したノウハウも盛り込んでいます。科目ごとに分けて取り上げていますが、自分の選択科目だけではなく、関連する科目にも目を通しておくことをお勧めします。論文の書き方や表現の方法などが役立つからです。例えば、鋼コンクリートで受験する人も、造るのが道路構造物なら、必ず道路政策の影響を受けて出題されます。したがって、道路の部分も併せて読んでいただければと思います。
第5章では技術論文の書き方を、第6章では筆記試験の当日から口頭試験終了までの取り組み方をそれぞれ説明しています。想定される質問や解答例などもまとめました。
21年度は、19年度の試験改正後2年間の出題形式が踏襲されると思われます。したがって、しっかり準備をすれば確実に合格できます。ぜひ、本書を参考に対策をして、合格を勝ち取ってください。
2022年3月には、晴れて皆さんが「技術士」になられることをお祈りしております。
2021年3月吉日
執筆者代表
株式会社5Doors’代表取締役 堀 与志男