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システムトラブルが8割減

 アプリケーションオーナー制度により、商品企画や営業企画、経理、人事といった業務部門が発注元としての責任を果たすルールを順守。IT部門が専門家の見地から技術面やコスト面の選択肢の提示、システムの開発、問題の対処、テストの支援といった業務に責任を持つ体制を敷いた。

 アプリケーションオーナー制度を徹底した結果、システムに起因するトラブルは同制度導入前より8割減った。現在も同制度を継続し、トラブルの水準を低く抑えている。業務部門とIT部門の責任の明確化と協力体制を早くから実践し、多くの国内企業の先駆けとなった。

 2008年には「抜本改革」と題した業務改革プロジェクトに着手。商品の約款を情報システムに実装しやすくするよう見直し、事務プロセスの簡素化と標準化を徹底。これらを支える情報システムを整備した。結果、事務手続きをこれまでに3割削減した。

国内外でデジタル戦略推進

 業務の効率化のみならず、損保のビジネスモデル自体のデジタル変革に力を入れ始めたのは2014年ごろからだ。IT部門主導で中長期的なIT戦略の策定に着手。基本構想の検討から計画策定、詳細化、インフラの構築へと取り組みを進めている。

 2016年には東京海上HDに「デジタル戦略部」を発足させた。グループ横断でのデジタル戦略立案や実行を主導する役割を担う。

 2020年4月には東京海上HDの部隊に加え、中核の事業会社である東京海上日動にもデジタル戦略部を発足。2021年4月にはグループの生命保険会社、東京海上日動あんしん生命保険にも同部門を設け、持ち株会社の同部門を司令塔にグループ全体のデジタル戦略をかじ取りする体制を整えつつある。

 グループ内の情報システム会社、東京海上日動システムズはデジタル戦略の実働部隊だ。東京海上HDのデジタル戦略部門との連携の下、2017年から全体計画の策定に着手。データ活用や事業創出の担当組織を設立した。

 現在、最も力を入れている取り組みの一つが基幹システムのモダナイズだ。契約管理や保険金の支払いといった伝統的な基幹システムに加え、保険契約者との接点を増やすためのスマートフォンアプリやデータ活用を促す基盤システムの機能を強化する。

 基幹業務のデータを直接使ったデジタル施策のPoC(概念実証)を容易に取り組める「トライアンドエラー型の事業体制」(東京海上日動システムズの吉田和史デジタルイノベーション開発部長)の確立を目指す。

東京海上グループのIT戦略の歴史
東京海上グループのIT戦略の歴史
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東大と連携、データ人材育成へ

 国内のみならず、海外にもデジタル戦略の推進体制を広げている。2016年から世界各地にデジタル戦略拠点を開設してきた。海外の現地グループ企業のデジタル戦略推進や出資企業との協業、新しい技術やビジネスモデルの調査・発掘を担う。

 人材育成にも力を入れる。データサイエンティストの育成に向けた独自講座を2019年度に設けた。

 その名も「データサイエンス・ヒルクライム」。AI研究の第一人者、東京大学の松尾豊教授監修の下、年間260時間、延べ8カ月に及ぶ本格的なものだ。内容は基礎数学から情報倫理、機械学習や深層学習、Pythonを使ったプログラミングまで。「事業にテクノロジーを生かすには、一定数の専門家をグループ内に抱えておく必要がある」(東京海上HDの小宮社長)との考えからだ。2020年4月からは同講座に社外の受講生も受け入れている。

 デジタル戦略のグローバル展開とシステム開発力の強化。両輪で進める東京海上グループの挑戦を見ていこう。

東京海上グループのDX戦略の具体策
東京海上グループのDX戦略の具体策
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