東京海上グループのDX(デジタルトランスフォーメーション)は一過性ではない。経営とIT部門がタッグを組み、システムと業務プロセスを一体で見直してきた。本格的な電算化から60年目にして、改めて自己を否定しシステム改革に挑む。
「DXはずっと続ける営みだ。変革を続けてきた我々にとって、さほど特別なことではない」。東京海上日動火災保険の堅田英次IT企画部次長兼企画グループ課長はこう言い切る。この言葉には、東京海上グループのDXが世の中にあふれる一過性のDXとは一線を画すという自負がにじむ。
これまでも東京海上グループはDXを続けてきたが、ここにきて「自己否定を始めた」(堅田次長)という。顧客ニーズやテクノロジーの変化に迅速に対応するうえで、既存システムが足かせになりかねないからだ。「テクノロジーの先行きを見据えて、インフラを変えていく」(同)。
次世代フレームワークを検討
東京海上グループは水面下で次世代システムの検討に乗り出している。改革の3本柱として「インフラ」「データ」「組織・プロセス」を打ち出している。
同社が描く次世代システムの全体像はこうだ。まず顧客接点を担う「SoE(システム・オブ・エンゲージメント)」、契約管理の「SoR(システム・オブ・レコード)」、データ統合・活用の「SoI(システム・オブ・インサイト)」の3領域を定義し、それぞれの役割や方向性を明確にする。そのうえで各システムをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で接続し、各種データをリアルタイムでやり取りできるようにする。
現状はSoEとSoRが複雑に絡み合い、それぞれがビジネス側からの要求を満たそうと改修を繰り返し、さらにシステム同士が密結合する悪循環に陥っている。データもあちこちに分散し、十分に活用できていないという。
次世代システムではSoEとSoRを切り離し、APIで連携する仕組みを採用する。さらに、SoRから統計分析やバッチ処理を分離し、SoIに統合する。SoRの中にがっちりと組み込まれたバッチ処理を分離・再構築し、システムの保守性や耐障害性を高める狙いがある。他企業との協業促進を見据えて、顧客データの利用に関するルール整備も進める。