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 国内通信大手の2021年3月期(20年4月1日〜21年3月31日)連結業績で、売上高と営業利益ともに3位に甘んじたNTTドコモ。KDDIやソフトバンクらライバルと比べ、今後の成長分野である非通信や法人へのシフトの遅れも目立つ。だがNTTドコモには反転攻勢に向けた切り札がある。21年夏にも予定するNTTコミュニケーションズ(NTTコム)とNTTコムウェアの子会社化だ。各社の業績を単純合算すると、新生NTTドコモ(通称ドコモコムコム)は売上高約6兆円となり、業界首位に躍り出る見込みだ。ただKDDIやソフトバンクと比べて圧倒的な首位にはならないという状況も見えてくる。

 NTTグループはステップ1として21年夏にも、NTTドコモによるNTTコムとNTTコムウェアの子会社化を目指すことを明らかにしている。さらに22年春から夏ごろにかけて、NTTドコモとNTTコムの機能を整理。個人向け営業はNTTドコモが中心となり、法人事業はNTTコムが一元的に顧客対応を進める計画だ。加えてNTTドコモとNTTコムの設備の効率化も進め、移動固定融合型のネットワーク構築を推進したいとしている。

 実際にNTTドコモがNTTコムとNTTコムウェアを子会社化した場合、どの程度の規模になるのか。KDDIやソフトバンクらライバルを圧倒する存在になるのか。参考までにNTTドコモとNTTコム、NTTコムウェアの業績を合算してイメージをつかんでみる。

新生NTTドコモの売上高規模の概算。単純合算で約6兆円の売上高規模となり、KDDIとソフトバンクを抜いて首位に躍り出る見込みだ
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新生NTTドコモの売上高規模の概算。単純合算で約6兆円の売上高規模となり、KDDIとソフトバンクを抜いて首位に躍り出る見込みだ
(作成:日経クロステック)

 業績を単純合算すると新生NTTドコモは、売上高で約6兆円、営業利益について約1兆円の企業になる。NTTドコモとNTTコムは21年3月期(20年4月1日〜21年3月31日)の連結業績を、NTTコムウェアについては決算公告で開示されている最新業績(19年4月1日〜20年3月31日)を参照した。

新生NTTドコモの営業利益規模の概算。KDDI、ソフトバンクと同水準になる
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新生NTTドコモの営業利益規模の概算。KDDI、ソフトバンクと同水準になる
(作成:日経クロステック)

 ライバルのKDDIやソフトバンクと比較するとどうか。KDDIの21年3月期の連結業績は、売上高が5兆3126億円、営業利益が1兆374億円だ。ソフトバンクの21年3月期の連結業績は、売上高が5兆2055億円、営業利益が9708億円である。新生NTTドコモは売上高で業界首位に躍り出る見込みだ。

 NTTドコモが他社と比べて遅れている非通信や法人といった成長分野へのシフトも進む。NTTコムとNTTコムウェアの事業を成長分野と見なすと、NTTドコモの売上高に占める成長分野の比率は現状の2割から4割に、営業利益も2割から3割へと拡大する。KDDIやソフトバンクは、現時点で成長分野が業績全体の3〜4割を占めている。NTTドコモはNTTコムとNTTコムウェアの子会社によって、ようやく他社をキャッチアップできる。

 一方で営業利益について、新生NTTドコモはKDDIやソフトバンクを上回る圧倒的首位にはならない。大手3社ともに1兆円前後となり、肩を並べる状況になりそうだ。

 とはいえ新生NTTドコモが法人営業体制の強化やネットワーク一体化による効果を発揮するようになると、一気に成長していくポテンシャルも秘めている。

 こうした点を踏まえ、KDDIやソフトバンクなどライバル企業は、「NTTドコモとNTTコムの一体的なサービス提供によって、NTTコムが強みを発揮する固定通信市場や法人市場などにNTTドコモの市場支配力が影響を及ぼすおそれがある」「NTTドコモとNTTコムのネットワークの一体化は、NTT東西のネットワークとの一体化につながり得る」といった懸念を指摘している。