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 「かつてのNTTドコモは、トップシェアだから他社に顧客を取られて当たり前という風潮があった。3~4年で数百万の顧客基盤が失われるままだった。値下げは短期的に見れば減収だが、2~3年で見ていくと顧客基盤を失わず収支を合わせられる。そういう発想に変えた」――。

日経クロステックのインタビューに応えるNTTドコモ副社長の廣井孝史氏
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日経クロステックのインタビューに応えるNTTドコモ副社長の廣井孝史氏
ドコモに転じる前はNTT持ち株会社に20年在籍。中期経営戦略の策定や財務部門長などを担った。(写真:日経クロステック)

 NTTドコモ副社長の廣井孝史氏は、日経クロステックの取材にこう打ち明ける。廣井氏は2020年6月、NTTドコモ社長の井伊基之氏と同じタイミングでNTT持ち株会社からNTTドコモに転じた。「ドコモを強くする」というNTT持ち株会社社長の澤田純氏のミッションを受け、井伊氏と共にドコモの現場に乗り込んだ。

 井伊氏がNTTドコモ社長に就任した20年12月以降、ドコモは確かに変わった。他社に先駆けて、20ギガバイト、月額2980円(税抜き、発表時)という破格値のオンライン専用プラン「ahamo」を発表。21年8月時点で契約数が180万件を突破するなど、KDDI(au)やソフトバンクの同様のオンライン専用プランを抑え、市場をリードしている。

 廣井氏は「実は販売プロモーションも強化している」と話す。「他社に対抗し、きめ細かく販売施策を投入し始めた。実はこれまでこうした施策にあまり取り組んでこなかった。料金プランは他社と大きな差はないが、こうした販売強化策も効いている」(同氏)と明かす。

 そんな「攻めのマインド」が功を奏し、ドコモは20年12月、MNP(モバイル番号ポータビリティー)の転入が転出を上回った。09年1月以来、実に12年ぶりのことだ。その後、月ごとにプラス/マイナスはあるものの、廣井氏は「21年4〜6月期のMNPも、トータルで転入が転出を上回っている」と打ち明ける。

 大胆な値下げ策を投入し顧客流出を抑える戦略に転じたドコモ。顧客基盤の維持では結果を出す一方、足元の業績は値下げの影響を受けている。携帯電話サービスによる収入を示す21年4〜6月期のモバイル通信サービス収入は、前年同期比97億円減となった。廣井氏は「値下げの影響もあるが、MNPで他社から顧客を取り戻したプラスの効果もある。実はMVNO(仮想移動体通信事業者)向けに音声通話の卸料金を引き下げた影響が一番大きい」と語る。

 ahamoなどの値下げ策の影響が本格化するのは、むしろ契約数が積み上がった来期以降だ。「この1〜2年が財務的に最も厳しい。5G投資も22年度から23年度にかけて山が来る。コスト効率化に取り組みつつ反転を目指す」(廣井氏)とした。