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 2019年5月公表から3年近くが経過したNTTの次世代情報通信基盤構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」。当初、30年代の商用化を目指していたところ、「24年に最初のIOWNデバイスを開発し、25年にシステム開発完了、26年から商用導入する」(NTT常務執行役員研究企画部門長の川添雄彦氏)など、ここにきて導入前倒しの動きが目立ち始めている。21年11月16日から19日にかけてオンライン開催しているNTTの研究開発イベント「NTT R&Dフォーラム2021」では、そんな商用導入に向かって動きを速めるIOWN構想の現在を感じられた。

IOWN構想の要素技術「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」の実証環境を使った対戦型eスポーツのデモ
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IOWN構想の要素技術「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」の実証環境を使った対戦型eスポーツのデモ
東京と大阪という離れた場所にいるプレーヤー同士が対戦した場合にも、遅延のばらつきを調整することで公平な対戦環境を用意できるという(撮影:日経クロステック)

 「この3年弱でIOWN構想のムーブメントはかなり大きくなった。私の手を離れ、(この構想に参画する)みなさんそれぞれが、世の中を変えられると考えて動く状況になった」――。IOWN構想の名付け親であり、同構想を推進する国際団体「IOWN Global Forum」の議長も務めるNTTの川添氏はこう胸を張る。

 IOWN構想は、低消費エネルギーという特徴を持つ光技術を活用することで、電力消費を大幅に抑えた超高速・大容量、超低遅延な情報処理基盤をつくるという壮大な構想だ。そんなIOWN構想を形づくる要素技術は多岐にわたる。インフラに近い部分では、中継網で使われている光ファイバー網をエンド・ツー・エンドで用いる「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」や、光信号と電気信号を不可分に融合する光電融合技術をコンピューティングアーキテクチャーへ活用する「ディスアグリゲーテッドコンピューティング」などがある。

 川添氏は「例えばオールフォトニクス・ネットワークは、商用導入を意識した開発の領域に踏み込み始めた」とする。今回のR&Dフォーラム2021では、エンド・ツー・エンドで100Gビット/秒超を実現するようなオールフォトニクス・ネットワークの実証環境を用意。東京と大阪という離れた場所にいるプレーヤーが、eスポーツで対戦する際に、公平な対戦環境になるように遅延のゆらぎをそろえるような技術を見せた。

 デモでは、大阪側にオンラインゲームを実行するクラウドサーバーを置く環境を模擬した。この場合、東京側のプレーヤーは、大阪と東京間の光ファイバー長である約700kmの伝送に伴って、光の速度であっても往復約7ミリ秒の遅延が発生してしまう。東京のプレーヤーだけが不利にならないように、エンド・ツー・エンドでネットワークの遅延を測定し、オールフォトニクス・ネットワークのコントローラーを用いて、大阪のプレーヤーに対しても東京と同じ遅延条件に調整するようにした。

 その結果、遅延条件がそろっていない場合は、東京側のプレーヤーが勝率で負けるケースが多かったところ、遅延条件をそろえることで勝率が拮抗(きっこう)するようなデモを見せた。eスポーツの例に代表されるように、IOWN導入に向けたユースケースの開拓が進み始めている。