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 「寝耳に水だった」「社内がざわついた」――。

 NTTドコモが総務省の有識者会議にて、携帯電話の電波割り当て方式としてオークション方式を検討するべきだと正式表明した件について、競合他社を含む業界全体に激震が走っている。これまでドコモを含む携帯各社は、オークション方式導入について反対の立場を貫いており、オークション支持の意見が出るのは国内携帯電話事業者として初めてだからだ。電波割り当ては携帯電話事業の根幹であり、方式変更は設備投資の前提を覆すため、利用者向けサービスへの影響も考えられる。にもかかわらずNTTドコモが電波オークション推進派に転じた理由は、時代の変化に加え、直近の電波割り当てで目立つ裁量行政への不満が浮かび上がる。

 NTTドコモ社長の井伊基之氏は2021年11月16日に開催された総務省の有識者会議で、電波オークションを検討するべきだとする理由として、「今後は多種多様な通信を実現するIoTが増加する。こうした用途に対し、周波数の割り当て時点で5〜7年先の基地局数などの事業計画を基に比較審査する現行の割り当て方式では、未知の需要に対して柔軟性を確保できなくなる可能性がある」と述べた。

NTTドコモ社長の井伊基之氏は、総務省の有識者会議で電波オークションを検討するべきだと主張した
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NTTドコモ社長の井伊基之氏は、総務省の有識者会議で電波オークションを検討するべきだと主張した
(出所:NTTドコモ)

 現在の携帯電話の電波割り当て方式である比較審査方式は、総務省が定める開設指針に基づいて、5〜7年後の基地局数やエリアの広がり、MVNO(仮想移動体通信事業者)促進などを審査項目として優劣を比較する。合計点で優れた事業者に対して、電波を割り当てるという方式だ。

 NTTドコモの井伊氏の主張は、人中心の通信が主流だった時代はこのような比較審査方式が機能したが、モノとモノの通信が主流になる5G時代は難しくなるという指摘だ。

 5G以降の電波の割り当ては、高い周波数帯が中心となり、ピンポイントエリアを対象として、ニーズに応じてソリューションと一体で提供していく形が主流になるだろう。これまでの比較審査方式の審査項目に必ず盛り込まれてきた、数年後の基地局数やエリアの広がりを競う形はフィットしなくなる。それならば、「事業者による計画の自由度が高まるオークション方式が適している」(井伊氏)というのがNTTドコモの主張になる。

 もっともNTTドコモが電波オークション推進に転じた理由は、これだけではなさそうだ。