NTTが副社長の島田明氏を社長に昇格させる人事を固めたことが分かった。現社長の澤田純氏は代表権のある会長に就く。2022年6月の株主総会を経て正式決定する。日本経済新聞などが報じた。NTTは一連の報道に対し、「当社が発表したものではございません」としている。
社長に昇格する島田氏は、NTTグループの出世コースである総務・人事・労務畑を主に歩んできた。直近ではグループのナンバー2として、事業戦略担当、CFO (Chief Financial Officer)、CCO (Chief Compliance Officer)、CHRO (Chief Human Resource Officer)の重責を担ってきた。従業員数約32万人の巨大組織であるNTTグループの人事と財務を一手に握る実力者だ。
島田氏は、堅実で安定感のあるマネジメントスタイルに定評がある。技術畑で、光技術を活用した次世代情報通信基盤「IOWN」など将来構想を軸に大胆な改革を推し進めてきた澤田氏とは対照的だ。島田氏は、スピードを重視し大胆な施策を立て続けに打ち出してきた澤田氏とは補完関係にあり、新体制では、代表権が残る澤田氏と二人三脚で改革途上のグループのかじ取りを進めることになりそうだ。
「陰の実力者」がトップへ
「澤田氏は島田氏への信頼が厚い。澤田氏は海外事業やIOWN構想に専念し、島田氏が経営執行を担う体制になるのではないか」。報道を受けて、NTT関係者からはこのような声が漏れた。
島田氏は、1981年に日本電信電話公社(現NTT)に入社。入社年次では澤田氏の3つ下に当たる。出世コースの総務・人事・労務畑を歩む一方、欧州法人など海外マネジメントも経験しており、「陰の実力者」との呼び声が高い。澤田氏が社長に就いた18年6月以降、島田氏は副社長として間近で澤田氏の改革を支えてきた。
島田氏は最高人事責任者として、「官僚以上に官僚的」といわれ年次主義が色濃く残るNTTグループの人事改革にもメスを入れてきた。ジョブ型人事制度や、経営幹部候補の若手を抜てきする制度「NTTユニバーシティ」を導入し、巨大組織の活性化に力を注いだ。
「澤田氏がこれだけグループ全体を“破壊”しつつも、経営が揺るがないのは、副社長の島田氏ががっちりと支えてきた側面も大きい」(NTT幹部)との声が聞こえる。そんな実力者である島田氏が、巨大組織のトップに立ち、グループの改革をさらに推し進めることになる。