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 ソフトバンクの宮川潤一社長執行役員兼CEO(最高経営責任者)は2022年5月11日、22年度(2023年3月期、22年4月〜23年3月)の同社の連結業績予想において、通信料金の引き下げよる前年比の減益影響がマイナス900億円と、今期がピークに達する見通しを明らかにした。それでも22年度の連結営業利益予想は、前年比1%増以上の過去最高益を目指す。キャッシュレス決済を手掛ける持ち分会社であるPayPayを今期中に連結子会社化する計画であり、その評価益の取り込みによって値下げによるマイナス分を吸収する考えだ。

「値下げの影響は思ったよりも厳しい」ともらしたソフトバンクの宮川潤一社長執行役員兼CEO(最高経営責任者)
「値下げの影響は思ったよりも厳しい」ともらしたソフトバンクの宮川潤一社長執行役員兼CEO(最高経営責任者)
(撮影:日経クロステック)
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 「値下げの影響は思ったよりも厳しい。今期(22年度)がボトムになる」。ソフトバンクの宮川氏は同日開催した21年度(22年3月期、21年4月〜22年3月)の連結決算会見でこうもらした。

 21年春に実施した一連の通信料金引き下げ策が、ソフトバンクの屋台骨であるコンシューマ事業の収益をボディーブローのように奪っている。宮川氏によると、利用者は端末の買い替え時に料金プランを見直すケースがほとんどという。同社の端末買い替えサイクルは約3年。値下げ初年度の21年度の影響はマイナス770億円だったものの、2年目の22年度はマイナス900億円まで膨らむ見込みだ。さらに23年度(24年3月期、23年4月〜24年3月)においてもマイナス500億円程度の影響が残るとする。

値下げの影響は22年度にピークのマイナス900億円に達する見込み
値下げの影響は22年度にピークのマイナス900億円に達する見込み
(出所:ソフトバンク)
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 22年度の同社のコンシューマ事業においては、値下げ影響のマイナス900億円に加えて、販売関連費の増加などで前年比マイナス600億円の影響もあるとする。コンシューマ事業全体で前年比25%減のマイナス1600億円もの影響が生じる計算だ。

 21年度の同社営業利益に占めるコンシューマ事業の割合は約6割に達する。コンシューマ事業にこれだけマイナス要因があれば22年度の増益はかなり厳しい。

22年度の増益はPayPay連結子会社化が一番の要因に
22年度の増益はPayPay連結子会社化が一番の要因に
(出所:ソフトバンク)
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 それでも増益を見込むのは、22年度中に実施する「PayPay連結子会社化が一番大きな要因」(宮川氏)とする。PayPayは現在、ソフトバンクと同社の子会社であるZホールディングス、そしてソフトバンクグループの3社が株式を保有する。ソフトバンクは優先株として25%を持つ。それを転換することで33%の株式保有とし、子会社のZホールディングス分と合わせてPayPayを連結子会社化する考えだ。

 現在のPayPayの業績は、積極的なユーザー還元策など先行投資が響いて赤字状態が続く。同社取締役専務執行役員兼CFO(最高財務責任者)の藤原和彦氏は「現状の持分法上の(PayPayの)簿価は限りなく低く、連結子会社化に伴う再評価益によって、今期の営業利益1兆円の見通しはできる」とした。

 22年度はPayPay連結子会社化の特需でしのぐとして、気になるのは23年度以降の業績の見通しだ。