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テレワークが普及する中で出てきたコミュニケーション不足という課題の解決策として「1on1ミーティング」に注目が集まっている。上司が部下のコンディションを把握したり、部下の悩み事をすくい上げ、解決の糸口を提示したりする場だが、部下に自律的に仕事を進めてもらえるきっかけにもできる。基本編の第2回として、1on1を進める上で上司にとって大切なスタンスやスキル、1on1を進めるステップを紹介する。

本特集の紹介内容。今回は第2回の「スタンス・スキル・ステップ」。1on1を円滑に進めるための心構えと準備をみていく
本特集の紹介内容。今回は第2回の「スタンス・スキル・ステップ」。1on1を円滑に進めるための心構えと準備をみていく
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 1on1ミーティング(1on1)に取り組むに当たって上司にどんなスタンスやスキルが求められるだろうか。1on1の導入支援などを手掛けているリクルートマネジメントソリューションズ(リクルートMS)HRDサービス開発部パーソナルディベロップメントグループの星野翔次氏によると、1on1に取り組む上司にとって、3つのスタンスと3つのスキルが大切だという。

1on1ミーティングで大切な3つのスタンス
1on1ミーティングで大切な3つのスタンス
(出所:リクルートマネジメントソリューションズ)
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 3つのスタンスとは「(1on1は)部下のための時間であり、主役は部下である」に加えて、「部下の行動と学習を促進する」「部下と上司の協働作業である」の3つを指す。上司のあるべき姿は一般に「部下を率いる主役となって、経験を基に部下を指導し、仕事は管理するにとどめて部下に仕事を任せる」といったイメージだ。しかし、「1on1では全く逆の在り方が上司に求められる」とリクルートMSの星野氏は指摘する。

 「部下の行動と学習を促進する」は、上司が部下に教えたり、雑談したりするだけで終わらせず、部下自身が経験したことから学びを得る「経験学習」ができるように上司が関わっていくことを指す。「部下と上司の協働作業である」も1on1で取り上げたテーマについて一緒に考えて寄り添うといったスタンスで、部下の経験学習を促進するために欠かせないという。

上司にコーチングのスキルが求められる

 スタンスが違うならば、1on1で上司に求められるスキルも一般的な業務で駆使するものとは違っている。リクルートMSの星野氏によると、1on1で必要なスキルは3つある。最も重要なスキルは「コーチング」だという。コーチングというスキルによって、対話を通して相手から気づきなどを引き出す。他の2つは、相手の知らない知識や仕事の進め方を教えたり指示したりする「ティーチング」、部下に現実と向き合ってもらうようにする「フィードバック」になる。

1on1ミーティングで大切な3つのスキル
1on1ミーティングで大切な3つのスキル
(出所:リクルートマネジメントソリューションズ)
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 これまで上司にとって持つべきスキルは主に「ティーチング」だった。部下が課題の解決策が思い浮かばず悩んでいるとき、上司がティーチングによって、自身の経験を基に解決策を教えれば、部下はすぐに解決に向けて動き出すことができるからだ。

 ティーチングは、部下が仕事の進め方をつかめていなかったり、仕事の経験を十分に積んでいなかったりする場合に駆使するとよいスキルだ。特に、新卒社員や中途採用の社員、未経験の仕事に取り組み始めた部下には有効だ。

 しかしそれ以外のケースで、上司が1on1でティーチングだけを駆使し続けていると、「部下は課題に直面したときに、解決策を導き出すのに上司を頼ってしまいがちになる。短期的には部下にとってプラスなのかもしれないが、長期的に見ると部下の成長によくないし、会社にとってもマイナスになる」とリクルートMSの星野氏は指摘する。