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 65歳以上の高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチン接種が2021年4月12日から始まる。ワクチン接種に向け政府と自治体は相次いで関連システムを投入する。従来の予防接種では1つのシステムを運用するだけで済んでいたものが、6システムにまで運用対象が膨らむ自治体もあり、さらにマイナンバーなど個人情報を扱うこれらのシステムの運用は複雑になる。各自治体は安全な接種がスムーズになると期待する一方で、早くもシステムの利用について不安の声を上げる。

(出所:PIXTA)
(出所:PIXTA)

ワクチン接種システムで現場が「炎上」

 「新型コロナワクチン接種のために、6つのシステムを運用する」――。2021年1月下旬、隣接する大阪市のベッドタウンである人口12万人の大阪府門真市の市役所は、ワクチン接種のシステムフローを巡って「炎上」していた。内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室(以下、IT室)や厚生労働省はワクチン接種に必要なシステムの資料を次々と公表したものの、多くの自治体にとってはどのシステムがどのような役割を持つのかすら分かりにくかったからだ。

 通常、予防接種業務は担当部署の保健師らが担う。これまで利用したことがない複雑なシステムをすぐに使いこなすのは難しい。そこでICT担当部署である、企画財政部ICT推進課に助けを求めた。

 同市の場合、通常の予防接種に用いるシステムは予防接種台帳のみだ。一方、今回厚労省は新型コロナワクチンの配送円滑化のために配送管理システム「V-SYS」を用意した。「厚労省の説明ではV-SYSと予防接種台帳だけで運用できると見えたが、そうではなかった」とICT推進課の坂本貴士課長補佐は振り返る。

 実際は、予防接種台帳、V-SYS、市が用意する住民からの接種予約管理システムの3つに加え、政府が開発したワクチン接種記録システム(VRS)、住民基本台帳、住基ネットの計6システムを連携して運用する必要があることが明らかになったのだ。

 坂本課長補佐はIT室や厚労省の公表資料を基に、複雑なシステムの役割や運用を分かりやすく説明するためのフロー図を作製した。この資料は他自治体やIT室とも共有し、役に立っているという。自治体によっては、ITに詳しい担当者がいなかったり、IT担当部署と接種担当部署の協力体制が整っていなかったりするケースもある。特にこうした自治体で「(システムに詳しくないが、予防接種を担当する)保健師らに好評だった」(坂本課長補佐)と手応えを話す。

 なぜワクチン接種のために6つものシステムを連携して運用する必要があるのか。ことの発端は2020年末にさかのぼる。