全2814文字
PR

 16歳以上の全国民を接種対象として、初めてのワクチンを接種する――。新型コロナウイルスワクチンの安全な接種に向けて、接種後の健康状態を迅速に把握するためのシステム導入やデータ活用が進む。これを契機に、これまで遅々として進まなかった医療データの連携・利活用につながるとの期待もある。

紙やファクスに代わってオンラインで報告へ

 新型コロナワクチン接種は予防接種法に基づく臨時接種として実施される。厚生労働省は「副反応疑い報告」や接種後の健康調査をスムーズにするために、SNS(交流サイト)やオンライン申請フォームを利用する。これまでの定期接種ではファクスや紙、はがきなどが使われていた。

 2021年4月12日以降に始まる高齢者への接種では、厚労省は発熱や接種部位の腫れといった健康状況の変化をアンケートで調べる「予防接種後健康状況調査」についてSNSを利用する計画だ。希望者を対象に、1回の接種で約50万人(3種類のワクチンをそれぞれ2回接種するため、計300万回接種分)にアンケートをとり、参加者は「接種当日」「接種1週間後」「接種2週間後」の計3回回答する。迅速にデータを集計するため、従来の定期接種などで利用していたはがきでのアンケート調査に代わり、SNSを活用することにしたという。

 さらに、医師が副作用を疑う場合などに医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告する副反応疑い報告制度でも、2021年4月からオンライン申請できる報告システムを導入した。紙やファクスなどによる報告に代わり、Webサイトのフォームから申請できるようにした。

 こうしたシステムの利用で期待されるのが、リアルタイムでの状況把握だ。接種者は万一健康被害が明らかになれば、予防接種健康被害救済制度による補償を迅速に受けられる。副反応疑い報告を検討・評価する厚労省の審議会は、通常の定期接種では数カ月ごとに開催するが、新型コロナワクチンでは現状約2週間に1回の頻度で開催するほか、必要があれば緊急開催もする。

データ分析から副作用を自動捕捉

 ただし、厚労省の副反応疑い報告や接種後健康調査はそれ自体で完結している。現状は使用したワクチンの種類、接種日時や場所などが記載される個人のワクチン接種記録とはデータ連携していない。ワクチン接種記録は、内閣官房の情報通信技術(IT)総合戦略室(以下IT室)が開発を進める「ワクチン接種記録システム(VRS)」上で別途集約する。

 また、予防接種後の健康調査は対象が一部に限られる上、副反応疑い報告があったものしか捕捉できない。一方で、今回初めての取り組みのため、未知の副作用が見つかる可能性もある。ワクチンの効果も正確には分かっていない。

 そこで、神戸市は全国で初めて、市民の医療・介護レセプト(診療報酬明細書)データや健診データなどを連携させ、それを基にデータベースを作成。そこにワクチンの接種記録を記載する予防接種台帳のデータを連携させ、新型コロナワクチンの効果や副作用の有無を自動抽出する取り組みを始める。

 まず、市民の国民健康保険(国保)や後期高齢者医療保険のレセプトデータ、健診データ、予防接種台帳に記載される新型コロナワクチン接種情報のデータを連携したデータベースを作成。このデータベースに入れるデータを1年にわたり追跡する。神戸市民約153万人のうち、データベースに含まれる対象は約60万人である。今後は、感染者のデータを管理している厚労省の「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」との連携も検討している。

 ワクチンの効果検証に役立つほか、本人の申告によらない、未知の副作用を抽出できる可能性がある。神戸市の取り組みは、まとまった形の市民のデータから得られる実態を行政が政策に反映するモデルになりそうだ。