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 若手エンジニアたちが今、面白い。VR(仮想現実)・AR(拡張現実)やAI(人工知能)、スパコン、暗号、自動運転、デジタルコンクリート、データセンシング――といった各分野でニューウェーブを巻き起こしている。

 本連載は日経クロステックが注目する若手技術者・研究者を取り上げる。最新技術だけでなく、それを生み出す、もしくは支える人物像に迫る。

梓設計 岩瀬功樹(いわせ・こうき)氏
梓設計 岩瀬功樹(いわせ・こうき)氏
1989年生まれ。立命館大学大学院を卒業後、2015年梓設計に入社。スタジアムやアリーナの設計を担当しつつ、19年に移転した梓設計新オフィスへのAI・IoT導入プロジェクトや建材・家具検索アプリ「Pic Archi(ピックアーキ)」の開発、バーチャル展示場「メビウスの輪Möbius Strip」の設計など、デジタル技術を活用した取り組みも担当(写真:岩瀬 功樹)
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 建設業界はデジタル化が遅れている――。以前までそう思われがちな建設業界だったが、最近はこのイメージを覆すように急速なデジタル化の波が押し寄せている。なかでもDX(デジタルトランスフォーメーション)にいち早く取り組んできたのが、空港や医療福祉施設、スポーツ施設などの設計で注目を集める梓設計(東京・大田)だ。

 同社は“本職”の建築設計以外にも、AIやIoTといったデジタル技術を活用したアプリ開発やバーチャル空間の設計など、建築設計事務所らしからぬユニークな事業を展開し続けている。

 2019年8月に竣工した新本社では「健康で創造的なオフィス」を目指し、実証実験としてAIやIoTを導入。オフィス内に設置したセンサーで温湿度や照度、騒音といったデータを採取している。さらに、社員が身に着けたウエアラブル機器で収集した心拍数などのデータとの相関性を分析してオフィスの環境向上につなげている。20年には日経ニューオフィス賞の「経済産業大臣賞」を受賞した。

東京・大田に移転した梓設計本社。実証実験の場としてAIやIoTを導入し、オフィス環境の向上を図っている(写真:日経クロステック)
東京・大田に移転した梓設計本社。実証実験の場としてAIやIoTを導入し、オフィス環境の向上を図っている(写真:日経クロステック)
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IoTなどを用いたセンシングは、温湿度や照度、騒音などを計測する(資料:梓設計)
IoTなどを用いたセンシングは、温湿度や照度、騒音などを計測する(資料:梓設計)
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 21年1月には働き方改革や業務効率化、テレワーク推進の一環で、最新型のApple Watch S6(アップルウォッチ)を全社導入した。アップルウォッチS6の全社導入は国内初の取り組み。オフィスの環境データと健康(バイタルデータ)、アクティビティーデータを採取しつつ、運動促進のアドバイスや便利機能のレクチャーをすることで業務効率化の促進を図る。

 このプロジェクトを仕掛けて、梓設計のDXを加速させた立役者が同社アーキテクト部門BASE03の岩瀬功樹氏だ。岩瀬氏は32歳と若手ながら、建築設計者としてスタジアムやアリーナ、eスポーツ施設の設計を中心に活動しつつ、デジタル技術を活用したプロジェクトで中心的な役割を担っている。

 同社が20年4月にリリースした内装資材の検索アプリ「Pic Archi(ピックアーキ)」の開発や、バーチャル展示場「メビウスの輪 Möbius Strip」の設計といったプロジェクトも岩瀬氏がけん引して実現したものだ。

梓設計が2020年4月にリリースした内装資材の検索アプリ「ピックアーキ」(資料:梓設計)
梓設計が2020年4月にリリースした内装資材の検索アプリ「ピックアーキ」(資料:梓設計)
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梓設計が手掛けたバーチャル展示場「メビウスの輪 Möbius Strip」。VRゴーグルなどの機器は不要で、インターネット上で誰でも見ることができる(資料:梓設計)
梓設計が手掛けたバーチャル展示場「メビウスの輪 Möbius Strip」。VRゴーグルなどの機器は不要で、インターネット上で誰でも見ることができる(資料:梓設計)
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 岩瀬氏が活躍の場を建築設計にとどまらずデジタル分野にも広げるきっかけになったのが、渡邊圭氏との出会いだった。渡邊氏は学生時代にスマートハウスなどを研究していたエンジニアで、18年に梓設計に入社した。岩瀬氏は「渡邊との出会いがなければ、IoTなどの活用は諦めていたかもしれない」と振り返る。